#220

ブロードがそういうと、ヘルキャットとアリアは背負っていたバックパックのスイッチを入れた。


ロウルはその装置が何なのかにすぐに気がつく。


「マルチラックシステムか」


マルチラックシステムとは、ストリング帝国にあったジェットパックというかばんのように背負せおったジェットの噴射ふんしゃによって推進すいしんする飛行ひこう器具きぐ改良かいりょうしたもの。


そのラックには自分のこのみの装置そうちを組みめる。


ラックシステム一覧には、先に述べたジェットパック(空を飛べための装置)、カメレオントロン(光の粒子を周囲に飛ばし、光を屈曲くっきょくさせて人や物を透明とうめいに見せる装置)などがある。


さらに対能力者用には、特殊な周波数を乱射し、マシ―ナリーウイルスの適合者てきごうしゃ奇跡人スーパーナチュラルといった者の能力使用を妨害ぼうがいする装置ダイナコンプと呼ばれるものがある(当然、呪いの儘リメイン カースであるロウルの力も封じられる)。


そして、プラットホームステレオというそのダイナコンプから出る電波を遮断し、設定した者だけには能力が使用できるようになる機器もあった。


マルチラックシステムを見て、ロウルはブロードたちの作戦を理解した。


呪いの儘リメイン カースの力を封じた上で、クリーンの奇跡人スーパーナチュラルの力を残し、先ほどのような連携れんけいで自分を倒すつもりなのだと。


「今さら気が付いても遅い」


すでにダイナコンプは発動。


続いてプラットホームステレオが起動し、彼らのいる周囲に光の粒子が巻き散らされる。


これでロウルはただの人間も同然だ。


それでいてブロードは、ダイナコンプの影響を受けない効果装置エフェクトで適合者の力そのまま。


クリーンはプラットホームステレオによって加護を受けたままの状態となった。


「行くぞッ! 今度こそ奴を仕留める!」


ブロードの掛け声と共に、クリーンは刀をにぎり直し、ヘルキャットとアリアはそれぞれインストガンの銃口をロウルへと向ける。


そして、ブロードとクリーンが同時におそい掛かり、ヘルキャットとアリア二人が電磁波を撃った。


まさにロウルにとって絶体絶命。


力は封じられ、相手は四人。


ブロードたちは作戦通りにいったと勝利を確信したが――。


「いい作戦だな。短い時間でよく考えたもんだ。しかも初めて組むはずのクリーンとの連携も最高にイカしてる」


ロウルに動揺どうようした様子はなかった。


そして、左右から放たれた電磁波を素手すでで弾く。


「だがな、ダイナコンプくらいじゃ俺は止められねぇよ」


それを見たブロードとクリーンは、思わず足を止めてしまった。

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