#194
――学校の放課後。
ミックスはジャガーに呼ばれ、街にある公園へとやって来ていた。
大事な話があると言われたものの、いつものように
公園には電気仕掛け
実は今ミックスの恋人だと勘違いされているジャズ·スクワイアは、ストリング帝国へ戻っている。
なんでも彼女の上司に当たるノピア·ラッシクに直々の呼び出されたそうだ。
ジャズの寝泊まりしているのは通う学校の寮なのだが、彼女と同室のウェディングではニコの世話が心配だということで、ミックスに
ミックスはニコを自分の寮の部屋に置いていくのも寂しがると思い、学校まで連れて来ていた。
普通なら機械ペットを学校に連れてくることは校則に違反しているのだが、そこは彼の担任教師であるアミノの
周りに変わった人物が多いせいか。
ミックスはわりと常識人に見られがちだが、こういうところは世間ズレしている。
普通に考えて電気羊を学校に連れていくなどダメに決まっているのだが、彼には何がいけないのかさえよくわかっていない。
「うん? なんかニコ、疲れてない?」
ベンチに腰を下ろしたミックスが訊ねると、ニコが弱々しい鳴き返した。
ニコがグッタリしている理由は、学校で散々その豊かな毛を
機械ペットが教室に現れれば、
クラス中の生徒に引っ張りまわされたニコは、もう二度と学校へは行きたくないと思いながらため息をついている。
「おう、待たせたな」
そこへジャガーがやってきた。
ミックスと同じく学校指定の作業用ジャケットを羽織り、いつものボサボサ頭を揺らしている。
呼び出しておいて遅れてくるなとミックスが言ったが、ジャガーには相変わらず
それから意味のない世間話を交わし、ジャガーがそろそろ本題に入るとその口を開く。
「単刀直入に言うぜ。オレはストリング帝国のスパイだ」
「あそう」
「反応うすッ!?」
重大な正体を告げたというのに、全く興味がなさそうなミックス。
隣にいたニコも同じように関心はなさそうだった。
ジャガーはそんな彼らの態度を気にしないようにし、気を取り直して話を始めた。
自分は帝国のスパイでいながらバイオニクス共和国の暗部組織ビザールにも身を置いている。
つまり両国の事情に
「ふーん」
「メェー」
「お前ら……もうちょっと興味持てよ……。けっこう大事なこと言ってんだぞ」
今日彼が伝えたかったのは、実はある人物がミックスを狙ってこの共和国へと侵入しているということだった。
その人物は、
ロウルは、バイオニクス共和国とストリング帝国の両国へと電子郵便を送り付け、共和国に住むマシ―ナリーウイルスの適合者の少年――ミックスを殺すと堂々と
「なんで俺がそんな有名人に狙われなきゃいけないんだよッ!?」
この事実に、今までも適当に相槌を打っていたミックスも声を張り上げた。
だが、ニコは変わらずにメェーメェー鳴いている。
「ともかくだ。本当ならオレが守ってやりたいところなんだが、
ジャガーいうに、共和国側からは戦闘用ドローンが用意され、帝国側からは軍人が数人、ミックスの周囲を守る予定のようだ。
「護衛って……。俺の知らないところでますます
「とまあ、そんなとこでオレはもう行くぜ~」
ジャガーはそういうと、ミックスたちに背を向けて歩いて行った。
だが、まだわからないことだらけのミックスは彼の背に言葉をぶつける。
「おいジャガー! そのロウルって人はいつ来るんだよッ!?」
「大丈夫だよ。今夜にでも護衛の連中がお前のとこへ来るから、詳しいことはそいつらに聞きな」
ミックスは、去って行こうとするジャガーに何度も声をかけたが、彼が足を止めることはなかった。
しょうがなく無理やり引き留めようとすると、突然ジャガーの足が止まる。
「そうそう、言い忘れた。あのお前の彼女のジャズ·スクワイアな。あれ、オレの姉ちゃんなんだ」
「えぇッ!?」
「しかも双子の」
「えぇッ!?」
ミックスは二度叫んだ。
そして、これにはさすがのニコも、ベンチからひっくり返るほど驚いている。
「でも、オレが共和国に来ていることはあいつには黙っておいてくれよ。一応、極秘任務なんでな」
「えぇ!? ジャズとジャガーが双子の
「会えば懐かしい顔だと思うぜ。それじゃ死ぬなよ~」
「待てってばッ!」
ミックスは慌ててジャガーを追いかけたが、公園から出ると彼の姿は消えてしまっていた。
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