#158

ステアーACRの銃口じゅうこう一斉いっせいにブレイクに向ける生物血清バイオロジカルのメンバーたち。


 そのとき、その中の一人がブレイクの容姿ようしを見て両目を大きく開いた。 


白髪はくはつに黒い和服わふく……? こ、こいつ、くろがねだッ!」 


気がついた男はブレイクのことを知っていた。 


それもそのはずだ。 


彼、ブレイク·ベルサウンドは、バイオニクス共和国がえらんだもっとすぐれたちからを持つ者――ハザードクラスの一人なのだから。 


その中でも共和国最強さいきょうと名高く、彼一人で一国の軍隊をつぶせるといわれている。 


先ほど男がいったくろがねとは、彼が共和国の科学者たちに付けられた二つ名。 


ブレイクがいつも連れている小鉄リトル スティール――漆黒しっこくの日本刀へ変化する妖犬ようけんを持って戦う姿すがたからそう呼ばれていた。 


「オレを知ってんのか? なら逃げろよ。それでもろうってんならのぞどおころしてやる」


 うすら笑いをかべていうブレイクに、生物血清バイオロジカルのメンバーたちは思わず後退あとずってしまっていた。


 だが、その中の指揮しきをしていそうな男が声をあらげる。


 狼狽うろたえる必要はない。


 くろがねブレイク·ベルサウンドが最強だったのはごく最近までだ。


 やつはどこかの落ちこぼれ――戦災せんさい孤児こじの学校の生徒せいとに追いめられたと聞いている。


 そんなどこのほねともわからぬ少年に負けそうになった相手にこわがるなと――。 


男は生物血清バイオロジカルのメンバーたちをふるい立たせる。


 「それに見てみろ。奴の力のみなもとである化け物の犬がいないぞ。今の奴にはうわさに聞くおかしな剣技けんぎは使えんはずだ」


 「化け物はひでぇな。スティールはああ見えて可愛かわいいヤツなんだぜ」 


ブレイクは特殊とくしゅ警棒けいぼうのような伸縮式しんしゅくしきの剣を構えると、生物血清バイオロジカルのメンバーたちを見て笑う。 


「それとよぉ。スティールがいねぇからって、別にオメェらが強くなったわけじゃねぇだろうがッ!」 


ブレイクが声を張り上げると、生物血清バイオロジカルのメンバーたちは一斉に引きがねを引いた。 


目の前から無数むすう弾丸だんがん発射はっしゃされ、ブレイクの体をつらぬこうと飛んでくる。 


このままでははちにされる。


 ヴィクトリアはブレイクに無理やりにでも防弾ぼうだんベストを着せておけばよかったと思っていたが――。


 「アーヒャヒャヒャッ! そうだ、来いよ!同じクズ同士殺し合おうぜッ!!」 


ブレイクはさらに笑っていた。 


そして、にぎっていた伸縮式の剣を一振りし、飛んできた無数の弾丸をすべて切りはらう。 


そのありない光景こうけいに、たじろぐ生物血清バイオロジカルのメンバーたちだったが、ひるんではいられないと射撃しゃげきつづけた。


 だが、当たらない。


 いくら撃っても弾丸はブレイクにはとどかない。 


ただ剣を振っているだけに見えるのに、弾丸はすべてたたき落されてしまっていた。 


それを目の当たりにしたヴィクトリアも生物血清バイオロジカルのメンバーたちもふるえが止まらなくなる。 


そう――ブレイク·ベルサウンドは小鉄リトルスティールがいなくても強かったのだ。 


「なにもう終わったって顔してんだよ? ここからだろ、オレが楽しむのはよッ!」  

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