#150

次にミックスが目をましたときには、科学列車プラムラインはバイオニクス共和国へ到着とうちゃくしていた。


ミックスとプロコラットが最後さいごなぐり合った後――。


ジャガーが共和国から軍がやって来ることをプロコラットたちにつたえ、一刻いっこくも早く列車からげ出すようにうながす。


自分で共和国に連絡しておいてなんだが、あんたらにつかまってほしくない。


それはきっとミックスもそう思っているはずだ、と。


そう言われたプロコラットはニカッと笑うと、ユダーティを抱きかかえる。


「今回はあれだな。勝負になんたら試合になんたらってヤツだった!」


「勝負に勝って試合に負ける?」


「そうそれだ!」


あきれるジャガーに声を張り上げて返事をするプロコラット。


彼にかかえられているユダーティは、そんな二人を見てクスクスと笑っている。


「ミックスが起きたら言っといてくれ! おれは、いや俺とユダーティはお前らが大好きだってよ!」


半殺はんごろしにしておいてよくそんなことを言えるなぁ……。ま、あんたらしいけど」


「楽しいケンカだった! また会おうぜ兄弟たちッ!」


そして、プロコラットは走る列車からユダーティを抱えて飛びりた。


飛び降りても大丈夫なんだと、またあきれたジャガーは、大声で笑い続ける彼の声と姿が見えなくなるまで二人をながめていた。


「以上、お前が気絶きぜつしていたあとはこんな感じだったよ」


「そっか、じゃあまた二人は会いに来てくれるんだね」


「お前も大概たいがいだな……。これだけボコボコされたのに……」


ミックスは今まさに共和国から来た救援隊きゅうえんたい救護班きゅうごはんに運ばれるところだった。


ドローンによってストレッチャーに乗せられ、このまま救急車きゅうきゅうしゃ病院びょういんへと連れていかれる。


彼の怪我けが自体じたいは大したことないらしいが、ねんのため精密せいみつ検査けんさを受けることになった。


ほかにもとくひど衰弱すいじゃくおそわれた一等客室の生徒せいと教師きょうしも、ドローンによってストレッチャーで運ばれていた。


ミックスとジャガーがプロコラットたちの話をしていると、そこへ彼らの担当たんとう教師であるアミノがやって来る。


あわてでやってきた彼女は、心配そうな顔をして、ストレッチャーに乗せられたミックスと立っているジャガーの手をつかんだ。


「あなたたち! また無茶むちゃをしたのでしょうッ!?」


アミノは顔のれ上がったミックスと、全身がげているジャガーを見て怒鳴どなりあげた。


そんな彼女に対して、ミックスはもうわけなさそうしていたが、ジャガーがからかうように笑う。


「オレは付き合わされただけで、全部ミックスのせいですよ」


「な、なにを言い出すんだよジャガーッ!?」


「だってそうだろ? そもそもお前が一等客室の連中を助けようとしなければ、そんなケガすることもなかったし。オレもこんな黒焦げになることもなかったんだ」


「俺は手榴弾しゅりゅうだんを使って列車の外に飛び出せなんて一言もたのんでないぞッ! それよりもアミノ先生! ジャガーはじゅうを持ってますよ!」


きたねぇぞミックスッ!? ここでそれを言うかッ!?」


アミノの前で言い合いを始め出す二人。


それを見ていた彼女は、その身をワナワナとふるわせながら顔を上げる。


ミックスとジャガーはまた怒鳴られると思い、身をかためたが――。


「でも、二人とも……無事でよかった……本当によかったです……」


アミノの顔は泣き顔だった。


自分もひどい目にったというのに、この人は相変わらずだ。


そう思ったミックスとジャガーは、なみだを流すアミノを見て微笑ほほえむのだった。

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