#129

それからふたたびアイスクリームを買いに行かされたミックスは、食べ終えたトライアングル、サードヴァ―、シヴィル三人の幼女ようじょにすっかりなつかれていた。


とら絨毯じゅうたんを頭からかぶされたりと、まるで彼女たちの玩具おもちゃのようにあつかわれている。


「お兄さんお兄さん。ガオー! 言ってよ」


「そうそう、そしたらサードヴァ―たちが撃ち殺すから」


「早く早くッ! シヴィル早く虎を撃ち殺したい!」


「いや無理だよッ! 死ぬから! 撃ち殺されたら死んじゃうからッ!」


そして三人の幼女は、無理矢理むりやりに虎の絨毯を被されたミックスは、狩りの対象たいしょうとして早く虎の真似まねをしろと強要きょうようされていた。


これにはさすがのミックスもいやがったが、幼女たちはそんな彼に飛び乗り、だったら四つんいになってくれとはしゃいでいる。


どうやら撃ち殺すあそびはあきらめ、虎の乗り物にするつもりのようだ。


渋々しぶしぶ承諾しょうだくしたミックスは、貨物車のゆかに両手をついて三人の幼女を背に乗せる。


「いけー虎ッ!」


「もっと早く走れッ!」


「キャッキャッ! さけべ虎ッ!」


「ガ、ガオー……」


当然早く走れるわけがないのだが、幼女たちはミックスのしりたたきながらもっとスピードを出すように言い続ける。


「もうッ足のおそい虎だなぁ」


「ホントだよぉ。こんなのぜんぜん虎じゃないよぉ」


き声も弱いし」


「こんな姿勢しせいで三人も乗せてたら早く動けるはずないって……」


泣きそうな声でいうミックス。


だが、幼女たちはけして彼を解放かいほうせず、そのまま虎であり続けろと要求ようきゅう


ミックスは、ため息をつきながらも彼女たちの無理いにおうじた。


そんなミックスたちの横では、フォクシーレディがソファーに寄りかかりながら、誰かとエレクトロフォンで連絡を取っている。


「ラムズヘッドか。うん、もうきたからすぐにむかえを寄こして。えッ? 列車のたびはどうだったかって? うーん、まあまあかな。少なくともトライアングルたちは楽しんでるよ」


先ほどあらわれた武装ぶそう集団によってかべ破壊はかいされたため、室内には冷たい風が入ってきていた。


それと列車でごすのにも飽きてきたのもあったのだろう。


フォクシーレディは自身じしん経営けいえいしているエレクトロハーモニー社の者へ、自分たちを回収かいしゅうするようにたのんでいた。


「じゃあ時間厳守げんしゅだよ。時は金なりってね」


そして、通話つうわを切ったフォクシーレディ。


ジャガーは部屋でたわむれているミックスと幼女たちとはなれた位置いちから、彼女のことを見据みすえていた。


それに気が付いたフォクシーレディは、そんなジャガーに声をかける。


「なにをそんなに見つめているのさ? あたしってそんなに魅力的みりょくてき?」


「そりゃ見るだろ。ハザードクラスなんてそうそうお目にかかれないからな」


「そうかい、ガッカリだよ。てっきりあたしにれちまったのかと思ったんだけどねぇ」


嘲笑あざわらうかのようなフォクシーレディに、ジャガーは表情を変えずにたずねた。


一体何のためにこの科学列車プラムラインに乗っているのだと。


フォクシーレディは気怠けだるげにくびかしげると、まるで挑発ちょうはつするような視線しせつでジャガーのことを見返す。


「なんでそんなことをあんたに言わないといけないのさ? どこ行こうが何に乗ろうがあたしの勝手だろう?」


「これから取引でもあるのか?」


ジャガーはフォクシーレディを無視むしして言葉を続けた。


彼女はそんな彼の態度たいどに、眉間みけんにシワを寄せたが、その笑顔はくずれなかった。


そして、ずっときびしい表情をしているジャガーに答える。


「あんたってさ、ホントにあそこの子と同じ高校生? なんかすっごくにおうんだけど」

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