#63

「つまんねぇなぁ……つまんねぇよ。舞う宝石ダンシング·ダイヤモンドつってもそんなもんかぁ」


ブレイクは黒い障壁しょうへき斬撃ざんげきを続けているウェディングへポツリといった。


だが、退屈たいくつそうにいう彼など気にせずに、ウェディングの手は止まるどころかさらにはげしさをしていく。


彼女の目はすでにいろうしない、そのあばれるさまはまるで手負ておいのけもののようだ。


そんなウェディングを見たブレイクはした打ちをし、にぎっていた黒いかたな――小鉄リトル スティールかまなおす。


ずっと彼女の攻撃を受け続けていたが、そろそろ反撃に出ようとすると――。


「だめぇぇぇッ!」


ジャズが二人のあいだに入ってきた。


ブレイクはてっきりウェディングに加勢かせいでもするかと思ったが、なんとジャズが向かい合ったのはウェディングのほうだ。


一本のてつパイプで、彼女の手のこうからえているダイヤモンドの剣での連撃をさばく。


まともに受けたら当然とうぜん鉄パイプでは強度きょうどが持たない。


ジャズはなんとかダイヤの剣を受けながしながら、ウェディングに向かってさけんでいた。


「ウェディングッ! 今は戦うよりもクリーンの治療ちりょうが先だよッ!」


しかし、それでもウェディングは止まらない。


目の前にいるジャズをちからまかせに退かすと、ふたたびブレイクをこうと向かっていく。


われわすれていてもジャズに攻撃をしないことが唯一ゆいいつすくいか。


ジャズは、その無意識むいしきてき味方みかたを分けているウェディングにけたのか、彼女の真正面ましょうめんに立って剣を鉄パイプで受け止めた。


当然鉄パイプは切断せつだんされ、彼女はウェディングの剣をかたらう。


返り血がウェディングの顔にそそぐ。


「あぁ……姉さん……? どうして……?」


「やっともどったか。ったく、手間てまをかけさせてんじゃないわよ」


ジャズのびて正気しょうきを取りとりしたウェディング。


自分のしてしまったことに唖然あぜんとしている彼女に、ジャズはニッコリと微笑ほほえんだ。


ウェディングは彼女にり、何度もあやまった。


自分はむかしからこうなのだ。


怒りに身を任せると周りが見えなくなってしまう。


だからずっとひとりぼっちだった。


わかっているのにジャズをきずつけてしまって、本当にごめんなさいと、ただジャズにすがりながら泣いている。


「こんなことして……私……。姉さんにきらわれてもしょうがないです……」


「なに言ってるのよ? あんた、あたしを誰だと思ってるわけ? こう見えても七年前のアフタークロエから数々かずかず戦場せんじょうを生き抜いてきたの軍人なのよ。そこらの小娘こすめ一緒いっしょにされちゃこまるのよね」


「でも……私の本性ほんしょうを見て……」


「そんなの朝から萌え萌えズッキューンとかやられるのと変わらないわよ。いつも笑っているのも、さっきみたいに暴れちゃうのも、全部あんたなんだから」


「姉さん……」


ジャズはそんな彼女をなだめながら、救急車きゅうきゅうしゃを呼んでほしいとたのみ、ウェディングにクリーンたちがいるところまで下がらせた。


ウェディングは冷静れいせいさを取り戻したのか、クリーンと小雪リトル スノーの傷の具合ぐあいを見ながら、持っていたエレクトロフォンで連絡れんらくはじめている。


自分の制服せいふくのスカートの切って手ごろな布を作り、肩の傷を止血しけつしているジャズ。


ブレイクはそんな彼女の姿すがたを眺めながらく。


「おい、茶番ちゃばんはもう終わりか?」


その言葉どおりつまらない座興ざきょうを見せられたとばかりに、ずいぶんと不機嫌ふきげんそうだ。


ジャズはそんな彼のほうへと体を向ける。


「あんたがクリーンにしたことはゆるせないけど。兄妹きょうだいゲンカってやつならあたしたちが口を出すことじゃない。あたしにも双子ふたごおとうとがいるからわかるよ。他人たにんに入ってきてほしくないことがあるのは」


勝手かってに入ってきといて勝手な言いぶんだなぁ」


一応いちおう、ウェディングに手を出さなかったことにはれいをいうわ。さすがあのクリア·ベルサウンドの息子むすこね」


「女……。テメェ、おふくろを知ってんのか?」


ブレイクは、クリーンと自分の母親――クリア·ベルサウンドの名を聞いた途端とたんに、すさまじい殺気さっきはなちだした。

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