#32

ブロードを機械化きかいかさせていた効果装置エフェクトくだけ、彼はもう動ける状態じょうたいにはない。


そう思ったミックスは安心あんしんしたのか、地面じめんにめりんでいるブロードのそばたおれた。


彼の機械化――装甲アーマードもすでにけてしまっていた。


「ちょっとあんたッ!? 大丈夫だいじょうぶなのッ!?」


ジャズがあわててると、ミックスはニッコリと微笑ほほえむ。


傷口きずぐちが開てるじゃないのッ!? 早く病院びょういんに行かなきゃッ! 」


「それよりも、これで終わったんだ。よかった……」


「あんたってやつは……どうしてこんなになってまで……。ムチャしぎだよぉ……」


「でもまあ、こんなもんだよね……ハハハ……」


それからジャズはミックスにかたして立ち上がった。


そして、まずはきず治療ちりょうさきだと言いながら、その顔を強張こわばらせている。


一方いっぽうミックスのほうは、ハハハとかわいた笑みをかべていた。


われながらカッコ悪いなぁ。戦いの後に女の子にささえられて帰るなんて……。ここで兄さんや姉さんだったらさりなくっていけるんだろうけど」


「……あんたはカッコよかったよ」


「へッ? 今なんて言ったの? よく聞こえなかったよ?」


「別になんでもないッ! いいからとりあえずあんたの傷口きずぐちふさがなきゃ」


ミックスから顔をそらしていうジャズ。


そのほおになっていたが、ミックスには当然とうぜんそれが見えなかった。


ミックスは、ジャズが何をそんなに感情的かんじょうてきになっているかわからないでいると――。


おれけか……。だが、作戦さくせん続行ぞっこうする」


地面にふかさっていたブロードがうめくくように言った。


すると、止まっていたナノクローンが起動きどうおんらし、動き始めた。


ブロードはミックスとジャズへくるしそうに声をかける。


「アーティフィシャルタワーを破壊はかいするのに、どうして俺が自爆じばくする必要ひつようがあったと思う?」


彼は血反吐ちへどきながら、この後ナノクローンがすることを二人へつたえた。


それは、アーティフィシャルタワーの爆破ばくは邪魔じゃまが入ったときのため――。


ブロード自身じしん、またはナノクローンのどちらかが自爆じばくすることで、作戦を成功せいこうさせるというものだった。


「俺が倒れて行動こうどう不能ふのうになったとしても、ナノクローンがすべて破壊されようとも、どちらにしてもアーティフィシャルタワーの爆破作戦は継続けいぞくする。どちらかが動ければ問題もんだいはない」


ブロードの言葉に驚愕きょうがくしているミックスとジャズの前を、ナノクローンが歩き出した。


そして、かかえていたヘルキャットとアリアを投げて、アーティフィシャルタワーへと向かって行く。


唯一ゆいいつすくいは、ナノクローンの歩く速度そくどおそいことくらいか。


だが、先ほどミックスが数体すうたい倒していたとはいえ、まだ三体さんたいのナノクローンがのこっている。


すでに満身まんしん創痍そういであるミックスには、ナノクローンを倒すほどの力は残されてはいない。


結局けっきょくは彼女たちをむことになってしまったな……」


「ブロード大佐たいさ……あんた、なんでッ!?」


ミックスがブロードへさけび、言葉を続けた。


「なんであんたは俺と戦ったときにあのドローンを使わなかったんだよッ!? ドローンと一緒いっしょに戦えば俺を倒せていただろッ!?」


「何を勘違かんちがいしている? まんいちを考えてのことだ」


「それだけじゃない! あんたはこころのどっかで止めてほしかったんじゃないのかッ!? だから負けるとわかっていたのに、ちからくらべみたいな戦い方を俺としたんだろっ!?」


「いいからジャズを連れてここから消えろ。さもないと死ぬぞ。爆破の衝撃しょうげきでこの周辺しゅうへん跡形あとかたもなくなるからな」


そういったブロードは、そのまま気をうしなったのか、何もしゃべらなくなった。


もうミックスのいにもジャズの声にも何の反応はんのうしめさない。


「くそッ! あれをなんとかしないと……」


「ちょっとあんた、まさかあれを止めるつもりッ!?」


「だってそうしないとみんな死んじゃうだろ。それじゃハッピーエンドにならないじゃないか」


「そんな身体からだ無理むりに決まっているでしょ!? ドローンはあたしが止めるからあんたは逃げなさいッ!」


「ジャズだってもうボロボロじゃないか?」


「うるさいッ! 今のあんたよりはマシだッ!」


こんなときに言い合いを始めるミックスとジャズ。


めていても、何故かその光景こうけいはとてもなごやかに見える。


しかしそんな二人のムードとは別に、三体のナノクローンはアーティフィシャルタワーに近づいていった。

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