第9話 女勇者は晩酌が好き
ロコさんに裸、というかチンコを見られた後、脱衣場で着替えた俺は何食わぬ顔をしてリビングにカムバック。さて、彼女の反応はどうか……。
「あ、蓮君、やっと上がったのね!」
デジャブかな?なるほど。先程の件はなかった事にしてくれるらしい。見た目に反して大人だな。年齢知らないけど。異世界に行く前の事を覚えていないなら聞いても無駄だと思ったのだ。
「さて!私はこれから晩酌タイムに入ります!蓮君も付き合って!」
「いや、明日学校なんで。っていうか高校生なんで。なにか作りましょうか?」
「もう!気が利くんだから!ここで問題です。私が今食べたいつまみはなんでしょうか」
そんなの分かるかーい。
「ヒント、私は勇者」
全然ヒントになってないんだよなぁ。勇者、勇者……。RPGで良く出てくる食べ物。
「ええと、薬草、とか?」
「不正解。私は……、最初にその薬草をどこで取れるか……、聞いて欲しいの……。そしてその薬草を一緒に取りに行って欲しいの…………。それが答え……」
……いや、なんでこの人飲む前からラリってるの?っていうか実質正解してない?
しょうがないので俺は適当にあてを用意する。何が良いかな。薬草がほしいくらいだから多分彼女は疲れているのだ。出来るだけ消化が良くて胃腸に優しいものを。
俺は作る。料理は嫌いじゃない。
俺は作った物を持って彼女の元へ。熱燗が良いそうなので日本酒も温めた。
「……これは何?」
「キャベツの塩漬けと、だし巻き卵のしらすおろし添えです」
「正解よ」
聞いてきた方がジャッジするの!?
俺はお酒飲まないけど、お酌がてら彼女に付き合うことにする。話を聞いた感じ大分長いこと向こうの世界にいたのだ。記憶はないとはいえ、本来はようやく日本に帰れた記念日の筈なのだ。誰か一人くらい祝ってあげないと可哀想だろ?
「スライムがサァ、ドラキーがサァ」
……ロコさんの異世界話が始まったんだけど、なんかさっきから雑魚敵の話しかしないんだけど。お前いつになったら魔王倒しに行くんだ?
「ロコさんって結構慎重派?なんですね。レベルいくつなんですか?」
そもそもレベルとかいう概念があるのか謎だけど。
「あ!それ聞いちゃう?もう、しょうがないんだから!特別だよ?でも、他の女の子には聞かない方が良いよ。セクハラだからね!」
聞く訳ないしセクハラなの!?
「レベル99です」
……カンストしてた。どんだけスライム狩りしてんねん。
「うん?その世界の基準とか良く分かりませんけど、前に言ってた攻撃力107ってなんとなく低くないですか?」
彼女は酒を置く。空を仰ぎ、右手で顔を覆う。すっごい分かりやすく、あちゃーって感じのジェスチャーをする。現実でやる人初めて見た。
「あれれー?おっかしいぞぉ?」
え?何それ。急にコナン君になった。誤魔化してるつもりなの?
「……あのね、蓮君。私のいた世界ではね、レベルが上がると通常の能力アップとは別にボーナスポイントが貰えてね、好きなステータスに振れるの」
おお。自由度高い系ね。RPGでは好きなタイプだわ。いや、待てよ。ロコさんは攻撃力も守備力も高くない。今までの感じから多分HPもMPも高くない。魔法は得意みたいだから魔力極振り的な?
「へぇ……。何に振ったんですか?」
「……運」
「え?」
……恒例のパターン来た。聞き返さなくても理解できたけど、そこはね?お約束じゃん?普通に耳を疑ったのはあるけど。
「違うの。あのね、運が良くなったらね、カジノで大儲け出来るかなって思ったの」
何の弁解にもなってないんですがそれは。
「……何か良いことありました?」
「あのね、ちょっとだけ状態異常に掛かりにくくなったの!」
無駄にリアル仕様~。あれ?でも……。
「ロコさんの鎧って確か……」
「良いの良いの!ちゃんと魔王倒せたし、こうして蓮君とも会えたしね!」
……皆まで言うのは止めよう。ロコさんが楽しいならそれで良いっていうか野暮っていうか。
いや、ちょっとドキッっとしちゃったのは内緒です。
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