番外編
同居人は小学生
私、ユリは今、悩んでいます。
悩み過ぎで頭が痛くなってくるくらい悩んでいます。
え? 何を悩んでいるかって?
私は今、高校三年生です。
はい? 進学で悩んでいるって?
いいえ、違います。
それは……
「ただいまー」
生命力に溢れているとでも表現すればいいのかってくらい元気いっぱいな声がリビングに響き渡りました。
それと同時に動物園の熊のように意味もなく、リビングを右往左往している私に抱き付いてきます。
そうです、この子が私の悩みの種なのです。
「お、おかえりなさい、ユウくん」
私の胸に顔を埋めるように抱き付いてくるこの子の名前はユウくん。
埋めるっていうほど、私は胸が豊かではないのだけど結構、抱き付き方が激しくて、ブラが外れそう……ううん? 違うよね?
外そうとしているんじゃないよね。
そうよ。
そういう意味合いがあって、抱き付いているんじゃないわ。
私は高校生だし、彼は小学生なのよ?
そうよ! まだまだ、親に甘えたい年齢だもん。
これは単なる家族としての親愛を表しているだけなのよ。
夕食の支度をユウくんに手伝ってもらった。
これもいつものことで揚がった唐揚げをあーんで食べさせたり、食べさせてもらったりしているけど、家族だもん。
夕食が終わるとバスタイムなんだけど、ユウくんは一人で入るのを怖がるの。
仕方がないから、私が一緒に入るんだけど。
「ユリ姉ちゃんはバスタオル取らないの? 取らないと平等じゃないよ」
「え? う、うん……でも、ほら。うーん、えっと」
一緒に入るけど私は当然、バスタオルを巻いてます。
従弟とは言ってもそこはちゃんとしないといけないと思うの。
彼は面倒だから嫌だって、隠す気がないみたい。
ユウくんはまだ一人じゃちゃんと洗えないから、私が洗ってあげるの。
それこそ、頭から爪先まで、ね?
そうするとあそこも洗ってあげないといけないのに私も抵抗がない訳ではないのよ?
他のを見たことないんだけど……というより、じっと見たらいけないと思うから、なるべく見ないように泡塗れにして洗うの。
だって、意外と洗いにくいっていうか、あんなものなのかしら?
「あっ、ほら。頭流すから、ね?」
「はーい」
ちょっとがっかりして、気落ちしたようなユウくんの声に気まずい雰囲気を誤魔化すようにシャワーをかけます。
こうでもして、話題を変えておかないと私のバスタオルを剥ごうとするのよね。
それだけじゃなくて、「僕もユリ姉ちゃんを洗ってあげるよ」って真顔で言うから、びっくりしちゃった。
さすがに全力でお断りしたけど。
実の姉弟でもそれはないと思います。
「それはダメ」って言った瞬間、すごく悲しそうな顔になるから、流されそうになったけど、こればかりは駄目よ。
そんなことされたら、止められなくなるじゃない。
私だって、我慢してるんだから。
だから、この想いは胸の奥にしまっておこうと思うんです。
私はユウくんの母親であり、姉。
家族なんだから。
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