第151話 伝説の大戦3
ドドドドドドドドドド・・・・・・
ヒッキ達大連合軍が魔物を引き付けて戦っている時、各国の精鋭を集めた二つの部隊の一つが、目的の地へと到着しようとしていた。
数万の精鋭部隊は、魔物との戦いで数を徐々に減らしていったが、名の知れた精鋭達ばかりで揃えた為に、その数倍の数の魔物を蹴散らし、一本の槍の様に突き進んでいた。
その先頭付近にいるシュバインが大声をあげる。
「門に近づきます!!!」
「オッケー!ここは任してちょ。」
隣で同じ様に馬に乗っている【7星】の一人、トリック=ミリアが言うと、数百メートル先にある閉じられた門に向かって片手を前にだす。
ゴンッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!
ズズズンッッッッッッ・・・・・・
トリックの目が光ると同時に、まるで巨人がハンマーで門を叩いたかの様に、鋼鉄で出来た門は強力な圧力で吹き飛び、数十メートル先に落ちる。
「入るぞ!!!」
トップクラン【ヒート】のクランマスター、アッシュが一気に馬を加速させ、先頭で帝都【クリスタ】だった魔境にはいる。
それに続いてシュバインや精鋭部隊が続々と門をくぐる。
そのまま一直線に中央にある一番高い異様な建物へと馬を走らせた。
「ふぅ。着いたな。」
アッシュは、元凶がいる建物の前まで来ると、馬から降りて後から来たクランメンバーや他の精鋭達に言う。
「しかし・・・・・妙ですね。帝都に入ったら魔物が一匹もいないなんて。」
シュバインは周りを見渡す。
ズンッ。ズンッ。ズズンッッッ・・・・・。
数万の精鋭部隊が全て元凶がいる異様な建物の前まで来ると、地面が響くような音が聞こてくる。
「・・・・・そんなに甘くないみたいですね。」
近くにいるジョアンが呟く。
見ると、帝都だった異様な建物群の間から続々と大型の魔物が現れる。
すると、分かっていたかのように、皆、戦闘態勢にはいった。
その内の一人、【アークス】のメンバーのビレッジが叫ぶ。
「行け!!!シュバイン!アッシュ!・・・・・お前達6人をここまで連れてくるのが俺達の仕事だ!・・・・・後は、計画通りだ!6人とこの中でも更に厳選した強い者達だけが中へ入るんだ!・・・・・俺達は外から来るあの魔物をここで防ぐぞ!!!!」
「やるぞ皆!!!絶対にここを通すな!!!!」
【ヒート】の副クランマスター、ロックがメンバーや他の国の精鋭達に叫ぶ。
オォォォォォォォォォォォ!!!!!
全員がそれに呼応する。
それを見ていたトリックの肩を軽く叩くと、【7星】の一人、エルビスが言う。
「さて。行くぞトリック。私達が戦う敵は建物の中だ。」
「ハハハ。あまり戦いたくないんだけどねぇ。」
「何を言ってるのトリック。オーシャン様のご命令は絶対よ。」
「ハイハイ。」
【7星】のパールに言われて、トリックは肩をすくめると、建物の中へと入って行った。
☆☆☆
「静かですね。」
「えぇ。」
中へと入ったリンはシュバインに囁く。
元凶がいるとされる建物の中に入ると、シュバイン達は魔物一匹遭遇せずに進んでいた。
「・・・・・逆に不気味ですねぇ。」
ジョアンが言う。
「そうね。何かあるかもしれないから、気を付けていきましょう。」
【スマイルスケルトン】3大幹部の一人、ミッシェルが答える。
その答えに同じく幹部のバルバッサが頷く。
「しかし・・・・・よく集まりましたね。」
シュバインは走りながら独り言の様に呟いて一緒に進んでいる者達を見た。
そこにいるのは、各国の名高る戦士達やSSS級冒険者達。そして裏の世界の上位の傭兵達やスマイルスケルトン、天使と悪魔の幹部達。
知らない者はほとんどいない有名人ばかり。
このメンバーだったら、一つの国を滅ぼす事も出来るだろう。
・・・・・・この人達を集めるとは・・・・・レイさんは本当に凄いですね。
「シュバイン!扉だ!」
先頭を走っているアッシュが叫ぶ。
全員が扉の前まで到着すると、シュバインが前に出て言う。
「皆さん・・・・・行きますよ。」
皆頷く。
シュバインが大きな扉を開けると、その中の中央に一人の執事の格好をした男が立っていた。
全員が中へと入り、その男の前へと歩むと静かに言う。
「・・・・・見た所、あの武器を所有している者は六名ですね。もう一名は辿り着けなかったのでしょうか?」
「いえ。後から来ますよ。貴方は?」
シュバインが答える。
「そうですか。あぁ、申し遅れました。私は主人の執事をやらせて頂いてます。メレンと申します。」
メレンは片手を前で曲げて挨拶をする。
「そうですか。という事は、その主人がこの地を滅ぼした元凶という事でいいのですね?」
シュバインの言葉を聞いて少し寂しそうな顔をするメレンは続ける。
「・・・・・武器をお持ちの六名の方は主人がお待ちです。どうぞお通り下さい。」
「六名以外は通れないのか?」
エルビスが言う。
すると、メレンは無表情で言う。
「えぇ。ご主人様が通していいとおっしゃたのはあの武器を持った方のみです。他の方は・・・・・・ここで殺します。」
「そうか。それは分かりやすいな。トリック・・・・・先に行け。すぐに追いつく。」
そう言うと、エルビスは光る長剣をゆっくりと抜く。
それに合わせて、他の者達も戦闘態勢に入る。
「それでは先に行きます。頼みましたよ。」
「分かったわ。さて、どれ程の者なのか確かめましょうか。ね、バルバッサ。」
「そうね。見た所、一人なのに私達を見ても余裕を感じるしね。」
ジョアンが言った後に続いてシュバインが皆に言う。
「皆さん。私達が元凶を倒せば目的は完了です。それまで時間を作ってくれればいいので、無理はしない様に。ではよろしくお願いします!」
シュバイン達六名はメレンの横を通り過ぎると、奥へと駆けていった。
シュバイン達がいなくなるのを見ると、南の大国【ナイージャ】の将軍の一人、ヴィクトが言う。
「随分と余裕そうだが、世界でトップクラスの我々に勝てるとでも?」
「・・・・・勝てる?」
メレンの雰囲気が変わる。
「・・・・・何か勘違いしている様ですね。貴方達はこの世界では実力者なのでしょうが・・・・・・」
眼が赤く光る。
???
そこにいたはずのメレンが一瞬でいなくなる。
皆が後ろをみると、少し離れた所でメレンは立っていた。
右手にヴィクトの生首を持って。
ヴィクトの体は遅れて血を吹き出し、そのまま床へと倒れる。
メレンは生首を持ったまま振り返ると続ける。
「・・・・・私から見れば、小さな虫けらの様なものです。」
☆☆☆
「はぁはぁはぁ・・・・・何なんだこいつらは。」
アークスのメンバー、ビレッジは狼狽しながら大型の魔物達を見る。
我々のクラン【アークス】はこの世界に来て、様々なダンジョンを攻略した。
数で言えば、どのクランや冒険者よりも多いだろう。
しかし・・・・・この魔物達は恐ろしく強い。
未踏破ダンジョンレベルだ。
それが何千体と襲い掛かってくる。
こちらも【アークス】の他にトップクランの【ヒート】や他国の精鋭揃いで約二万はいたが、すでの半数になっていた。
数十人でやっと一体倒せるのが現実だったのだ。
「おい!ビレッジ!そっちはまだ大丈夫か?」
ヒートの副クランマスター、ロックが叫ぶ。
「ああ!まだ俺達は耐えられるが、他がどんどん数が減っている!もうそんなにもたないぞ!!!」
「・・・・・まずいな。・・・・・どうする?」
ロックはリーダーのアッシュやアークスのシュバインに言われていた。
厳しそうなら、撤退をする様にと。
しかし、我々が撤退すれば、あの魔物達がアッシュ達が入った建物へ押し寄せるかもしれない。
それだけは何としても避けたかった。
「クソッ!!!」
思わず独り言の様に、ロックは言葉を吐き捨てる。
ん?
ロックの前でヒートのメンバーが戦っている大型の魔物の頭上に、いつの間にか大きな黒い玉が浮かんでいた。
グゥゥゥゥゥゥゥゥン・・・・・・
その玉がそのまま目の前の魔物を含む、数体の大型の魔物を包むと、真っ黒い小さなドームが出来上る。
そして、数分後、そのドームが消えると、そこにいた大型の魔物が消滅していた。
周りを見ると、所々に黒い玉が浮かんでいて、同じ様に魔物達をその黒い玉の中へと取り込み、消滅させていった。
唖然とその光景を見ていると、空から漆黒の羽を広げて美しい女性達がこちらへと飛んでくる。
その中心にいる一際大きな女性が、大きな羽を広げて精鋭達が守っている建物の前へと着地すると言う。
「フゥ。参ったわ。空にあんなにも魔物が飛び交っているなんてね。少し時間がかかっちゃったかしら。あら・・・・・丁度良かったみたいね。」
ロックやビレッジは自分達が来た道を見る。
すると、大型や中型の魔物を蹴散らしながら、突き進んでくる部隊があった。
二手に分かれたもう一つの部隊。
レイ達がいる部隊だ。
「レイ!・・・・抜けるぞ!!!」
アルク帝国5大将軍の一人、エリアスが叫ぶ。
ズズズンッッッッッッ!!!!
後ろから不意を突かれた大型の魔物を剣で斬りふせ、もう一つの精鋭部隊が到着した。
「アークスやヒートの皆さん!大丈夫ですか?」
僕は、ビレッジの元に駆けつけると言う。
「助かったよ!来てくれたんだね!」
シュバイン達は比較的平坦な道の右から、僕達は山を越えなければいけない左から回ってきたため、遅れてしまったようだ。
「状況はどうですか?」
僕はビレッジに聞くと、シュバイン達は先に中へと突入し、作戦通り、残った者が侵入させない様に防いでいたが、すでに半分ほどやられてしまったらしい。
すると僕の肩を優しく触りながら、シャインが笑顔で言う。
「レイ。私は元凶とは戦えないから、ここは任せてもらってもいいかしら?」
「えっ。いいんですか?」
「えぇ。貴方が戦い終わるまでは、時間を稼ぐわ。」
すると、隣にいるエリアスが剣を構えながら言う。
「先に来ていた部隊は負傷者もかなり多い。だからここは、私達が守る事にするよ。レイ君。後は頼んでいいかな。」
僕は、シャインとエリアスを見て言う。
「分かりました。それではお願いします。・・・・・皆!行くよ!」
僕はそう言うと、ホワイトフォックスの仲間達を連れて建物の中へと入って行った。
☆☆☆
中に入ると、外とはうって変わって、静寂に包まれていた。
魔物とは遭遇せずに僕達は突き進む。
「レイ!扉よ!」
白雪が隣で一緒に走りながら言う。
「よし。入るぞ!」
バンッ!
僕は、すでに少し開いて中の光が差し込んでいる大きな扉を開く。
ピチャ
中へと一歩踏みしめると、水だまりを踏んだ様な音がする。
見ると、所々に床が血に染まっていた。
「おや・・・・・またお客様ですか?」
グシャッ!!!
中央に立っている執事の格好をした男が、言いながら右手に顔を掴んでいた、世界で5本の指に入る傭兵の一人の顔を潰し、血が舞う。
「・・・・・あれが元凶?」
「ちがうわよぉ~。」
「ノア!」
僕が呟くと、近くの壁にもたれかかったいた犯罪ギルド【天使と悪魔】の10本指の一人、ノアが答える。
見ると、右腹を貫通され、穴があいて血が噴き出ていた。
「アイリ!」
「うん!」
すぐにアイリが回復魔法でノアの傷を塞ぐ。
「アイリちゃん。ありがと~。助かったわぁ。」
「あいつは?」
ノアは、治った傷口を触りながら答える。
「・・・・・元凶の部下みたい。六人は元凶の元へ先に行ったわ。私達は行く事は許されなかったから、あの男を倒して行こうとしたんだけどね。まるきり歯がたたなくて、トップクラスの精鋭達が結構いたのに・・・・・ほとんど死んじゃったわ。」
見ると、まだ血を流しながらも立ち向かおうとしている者達が数名。
あれは、僕と戦った事のあるエルビスと言ったか。
他にもジョアンと一緒にいて挨拶したミッシェルやバルバッサもいる。
執事の格好をした男は、僕の方を見て言う。
「たしか貴方はケイト様が言っていたレイ=フォックスですね?貴方は通す様に言われています。どうぞ、奥の扉へ進んでください。」
「僕の仲間もいいかな?」
「いえ。貴方だけです。他の者達は・・・・・皆、死んでもらいます。」
僕は顔色を変える。
すると、エメが僕の前へと出て言う。
「レイよ。白雪達を連れて先に行くがよい。ここから先の元凶とは、ワシは戦う事が出来んのでな。だから、ワシがあの男の相手をしようではないか。・・・・・のぉ、メレンよ。」
すると、執事の格好をした男は、頭を下げて言う。
「これはこれは、エメリアル様。お久しぶりでございます。」
エメはそのままゆっくりとメレンの方へと歩きながら言う。
「ほれ。さっさと行くがよい。・・・・・・あと、男女。先に来て生きている者は、さっさと外へ出るんじゃ。」
「えぇ~?私も・・・・・いや。分かったわぁ。ほら!皆!戻るわよ!」
ノアは、いても足手まといと判断したのか、生き残っているエルビスやミッシェル達を連れてエリアス達がいる外へと戻る。
「エメ!頼んだよ!」
僕は仲間を連れて先へと駆けながら言うと、エメは笑顔で頷く。
「フム・・・・・・どうしたのじゃメレンよ。レイ以外はここで殺すんじゃなかったのか?」
メレンは同じ様に笑顔を作ると言う。
「エメリアル様を相手に、ほおっておいて他を攻撃しようなどと自殺行為は致しません。ここを守る様に言われておりますので。」
「・・・・・何でセービットがこんなバカな事をしたのかは聞かん。だが、レイを悲しませる事だけはゆるさんのでな。メレンよ。覚悟は出来てるな?」
そう言うと、エメの美しい銀の髪が、金色へと変わる。
そしてゆっくりと長剣を抜く。
それを見ながらメレンの体は徐々に変形していき、人でも魔物でもない見た事のない異様な者となる。
「・・・・・私は、セービット様から生命を与えられた付き人であり守護者。セービット様と同じ力を持つエメリアル様にどこまで対抗できるか分かりませんが・・・・・全力で行かせていただきます。」
ズンッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!
レイや他の者達が出て、暫くしてその部屋から大きな振動が起きた。
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