第135話 クリスタル帝国4
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
僕は横へ走りながら銃弾を躱す。
「はっ!器用に躱すな!」
ジャックは一定の距離を保ちながら二丁の拳銃で攻撃をしてくる。
思ったよりスピードが速い。
僕が距離をつめようとすると銃を撃ちながら離れていく。
なら・・・・・
僕は急に方向転換し一直線にジャックへ向かって駆ける。
「!!!・・・・いい的だぜ!!」
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
ジャックの弾が僕の体をすり抜ける。
「何?」
「・・・・・とらえた。」
奥義【まどろみ】を使って背後にまわった僕は、ジャックの胴に一刀を入れる。
キィィィィィィィィン
すかさず反転して二丁の拳銃をクロスしながら僕の一刀を防ぐ。
そのままバックステップをしながら距離をとろうとする。
「逃がさない。」
シュン。
同時に同じ様に距離をつめようとすると、ジャックはニヤリと笑いながら言う。
「アメージングな奴だな。だがこれで終わりだ。・・・・・今までこいつを使って生き残った奴はいない。・・・・・・【無限跳弾】!!!」
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
ジャックは後ろへ飛びながら、二丁の拳銃の銃口が光ると、両腕を広げて明後日の方向へレーザーとなった弾を撃つ。
!!!!!
まずい!
距離をつめようとした僕は、前に出るのを止めて、すかさず横へ飛んだ。
レーザーが壁に跳ね返って僕の行こうとした所を襲う。
そこにいない僕の床を跳ねて、レーザーは消えず、また上空へと向かう。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
飛び交うレーザーを無視してジャックは続けて何十発も撃つ。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!
その青白い数十発のレーザーは、ジャックの周りの壁や床、天井を音速の速さで跳ねる。
予想のつかない銃弾がその都度、僕を襲う。
キン!キン!キン!キン!キン!キン!
それを僕は剣で弾く。
「グレイト!よく剣で器用に弾くな!そんな奴は見た事がないぞ。・・・・・だがいつまでもつかな?」
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
ジャックは更に撃ち続け、100発以上のレーザーがホールを行き交う。
その光景はジャックを中心に無数の光が飛び交っているみたいだった。
僕は何とか避けながら徐々に一番離れた壁まで下がる。
「ハハハ!どうした!そんなに離れたらお前の剣は俺には到底届かないぞ!」
剣士など、接近戦をする奴は近づけさせなければいい。
エルビスを想定してあみだした技だ。
この銃弾の嵐をかいくぐる事は到底不可能。
どんな奴でもな。
ジャックは帽子の唾を銃口で器用に直しながら呟く。
「勝ったな。」
遠くの壁際まで下がったゼロを見ると、剣を鞘に納め、ゆっくりと両足を広げて前かがみになり柄を握っている。
数発、肩や腕、足に当たっているが、気にするそぶりをしていない。
・・・・・何だ?・・・・・何をするつもりだ?
僕は大きく息を吐いて言う。
「フゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・・・
居合最大奥義・・・・・【真光】。」
一瞬。
何かが光った。
「・・・・・・・・・ん?」
・・・・・・・・
・・・・・・・・
消えた?
・・・・・・・・
・・・・・・・・
「ゴフッ。」
かなりの距離を離れていたゼロが、いつの間にかジャックの後ろにいる。
気づくと、銃を持った左腕が斬られ、そのまま心臓がある左胸まで斬られていた。
ジャックは後ろを振り向き、血を吐きながら笑顔で言う。
「・・・・・何だお前?・・・・・・クソッ・・・・・・・化け物が。」
ドッ。
そのまま床へ倒れた。
同時に、無数のレーザーが消える。
「ふぅ。」
僕は剣を収めると、すぐにポケットから飴玉の様な物を取り出して食べた。
すると体中が緑色に輝き、みるみるうちに撃たれた傷口が塞がる。
この玉は、キリアが特別に作ってくれた回復魔法を詰め込んだ薬だ。
これを作るのに相当な時間がかかり、まだ5個しかないらしい。
それを全部僕にくれたのだ。
全部は貰えないと言ったのだが、
「・・・・・ダメ。・・・・・いない時に何かあったら回復できない。・・・・・持ってろ。」
「はい。」
もの凄い気迫に二つ返事で僕は従った。
凄いな。
あっという間に元通りになっている。
しかもこの感じは体力も全回復しているな。
この戦いが終わったらキリアにはもう一度お礼を言わないと。
さて・・・・・。
僕はエレベーターらしき物の前まで行き、隣にある案内板を見る。
なるほど。
1階~50階までは行けるが、51階からは、皇族と関係者しか行けないらしい。
このエレベーターも50階までしか表示されていない。
「とりあえずは、50階まで行くか。」
僕はエレベーターの中に入り、50階を押した。
☆☆☆
「・・・・・・・・・・な・・・・なんなんすか・・・・・お前・・・・・・。」
オブジェクトは全身、無数の太い針に刺され、串刺しにされていた。
その刺さった針から血が流れる。
「お前?・・・・・失礼ですね。ちゃんと最初に名のりましたよね。・・・・・・・聞いてますか?」
見ると、オブジェクトはすでに息絶えていた。
シュバインはニヤリと笑いながら亡骸に言う。
「・・・・・いい勝負でした。久しぶりに本気を出して戦いましたよ。たまにはちゃんと体を動かさないといけませんね。」
そう言うと、混合軍の方へと歩いて行った。
その右手に持つ、白い大きな盾は血で赤く染められていた。
「サイクス将軍!ナイージャの【砂漠の騎士】部隊が押されてます!」
「そうか!ならば【アルメリアの盾】2万、援軍に向かえ!」
「ハッ!」
帝都から数百キロ離れた海に近い平原。
そこでは、『クリスタルファースト』のクリスタル軍ほぼ全軍と混合軍が戦っていた。
サイクスは周りを見渡す。
地上では混合軍と同じ位の数のカルガラが前衛で立ちふさがっている。そして、上空にはレギアが離れた位置で、大きな銃で攻撃をしている。
・・・・・まずいな。最初は勢いで押していたが、数が圧倒的に不利だ。しかもシュバイン殿がロボットと言っていたあの鉄の人形を全て破壊したとしても、後ろには、更にクリスタル兵が控えている。・・・・・まだ、アイリちゃんがこちらにいてくれるから被害が少なくて済んでるが・・・・・・・
ここは、撤退のタイミングを誤ると危険だな。
ピィィィィィィィィィィィィィィ・・・・・・・
するとどこからともなく、笛の音が聞こえる。
撤退の合図だ。
サイクスは後ろを見ると、簡易で作った指令室の前でシュバインが大声をだす。
「皆さん!!!!十分時間を稼ぎました!!!そろそろ頃合いです!!!!・・・・・撤退しましょう!!!!」
!!!!!
ナイスタイミングだ!
サイクスは、すぐに指示をだす。
「撤退するぞ!!!!」
オォォォォォォォォォォォォォ!!!!!
アルメリア、ナイージャ、オロプス、アルク帝国、全ての部隊が一斉に撤退を始める。
「アダン様!敵が撤退を始めています!・・・・・後、残念な報告です!オブジェクト様が討たれました!!!」
「何だと?!!!」
・・・・・【7星】が討たれただと?何と言う事だ!それだけで我が国はかなりの損失だぞ!
クリスタル軍を任されている大将アダンは、レギアに乗りながら後方で敵の行動をスクリーンを見ながら言う。
「クソッ!・・・・・しかし【7星】は撃たれたが、敵わないと判断したか・・・・・。ならば、ここへ来た事を後悔させてやるのだ!背を向けた敵を一人でも多く葬れ!」
アダンの号令で、カルガラとクリスタル兵が混合軍の後を追う。
シュバインを通り過ぎて、全ての混合軍が指令室より海の方へと撤退し、クリスタル軍が迫って来た時だった。
シュバインが手をあげる。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!!!!!!
混合軍とクリスタル軍の間に、高さ数十メートルの火柱が横に数キロ立ちのぼる。そして同時に上空で雷が落ちる。
シュバインが指示をだし、冒険者率いる魔法部隊が、あらかじめ準備しておいた強力な魔法陣を戦いの最中に設置していたのだ。
撤退する時に使用する為に。
「上手く発動しましたね。これならロボットもクリスタル兵も簡単にはこちらに来れないでしょう。・・・・・それと・・・・行くのですか?」
撤退のしんがりを務めているシュバインは、留まっているアイリとカイトに言う。
「ええ。ここでの役割は終わったから、あるべき場所へ戻るわ。」
「ああ!僕の帰りを待っている仲間がいるからね!」
シュン。
アイリとカイトは、シュバインに返事をすると、帰還紙を取り出してその場から消えた。
「・・・・・こちらは出来るだけ時間を稼ぎました。・・・・・・・・レイさん。後は頼みましたよ。」
シュバインは呟くと、飛空艇に乗り込んだ。
☆☆☆
「ハッ!」
キンッッッッッッッッッッッッッッ!
ゴォッッッッッッッッッッッッッッ!
「ハァッ!」
ゴォッッッッッッッッッッッッッッ!
キンッッッッッッッッッッッッッッ!
「ハァハァハァ・・・・・何なの?貴方は・・・・・。」
【7星】のパールがキリアに言う。
私は、自然を支配できる能力を持っている。
辺り一帯を凍らせる事も出来るし、業火で火の海にする事も出来る。
しかしこの子・・・・・・私が凍らせようとすると炎を出し、炎で燃やそうとすると冷気を出す。・・・・・しかも同じ位の威力で。
この世界には魔法があるのは知っているが、自然を支配できる私と同じ威力の魔法を放つなんて・・・・・・ありえないわ。
「・・・・・・これで終わり?・・・・・・じゃ、私の番。・・・・・・この魔法は防げる?・・・・・・【深炎】。」
キリアが片手を前に出して唱えると、黒い炎がパールを襲う。
「ハァァッ!!!!」
パールの冷気が黒い炎にぶつかるが、黒い炎はもろともせず冷気を押し返す。
「!!!・・・・・水よ!!!!・・・・・地よ!!!!」
地面から水柱となって水が飛び出し、すでに放っている冷気と一緒にぶつける。
同時に、パールの前の地面が盛り上がる。
黒い炎は、冷気と水で威力が弱まり、盛り上がった地面を溶かしてやっと止まった。
「ハァハァハァ。私より威力があるなんて。・・・・・マレの解析だと、貴方達の実力はよくて大将、中将クラスと表示されていた。私達より弱いはずなのに・・・・・。」
「・・・・・私達は今まで本気を出していないだけ。・・・・・それよりどう?・・・・・・この【深炎】・・・・・・これは魔界の最強魔法の一つ・・・・・今、使えるのは私と・・・・・・」
キリアは悲しそうな顔をして呟く。
「・・・・・レイの友達だけ。」
「何で当たらないのよぉ~!いけ~!!!」
漆黒のロボットに搭乗しているイルミルは、複数のレバーを同時に引く。
すると、巨大なロボットの背中から数十発のレーザーが白く美しい羽で飛んでいる白雪めがけて追尾する。
シュン。シュン。シュン。シュン。シュン。シュン。
高速で横に飛びながら追尾してくる無数のレーザーをギリギリで避けている。
「う~!当たらないんなら当たるまでもっと撃ってやる!・・・・・ん?」
イライラしながらスクリーンを見ているイルミルは、背後に生体反応がある事に気づく。
「僕を忘れてもらっちゃ困るな!」
【天竜強靭化】になったラフィンは、人型の竜の羽で上空へ飛び、白雪に攻撃している隙をついてミルキィの背後につき、両手を重ねて思いっきり【ミルキィ】の頭部を叩いた。
「ハァッッッッッ!」
ドンッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!
「キャッ!」
もの凄い衝撃を受け、そのまま地上へと落下するが、いつの間にか、避けていた白雪が地上で待ち構えていた。
白雪は二本の剣をクロスして構える。
「・・・・・奥義【疾風】。」
呟くと同時に、消える。
落ちる漆黒のロボット【ミルキィ】に突風が吹いたかと思うと、両腕が綺麗に切断された。
ズンッッッッッッッッッッッッ!!!!!!
そのまま地面へと落ちる。
「イルミル!」
姉のパールが、落下して無残な姿になっているロボットに向かって叫ぶ。
白雪が、キリアの方を見て言う。
「どう?キリア。そっちは終わりそう?」
「おう。・・・・・そろそろ本気出して・・・・・止め刺す。」
「そう。それじゃ、私達も、中にいる子に出てきてもらって倒しましょうか。」
「待て!」
白雪は漆黒のロボットに向かって歩き出そうとすると、パールに呼び止められる。
「何かしら?」
「・・・・・お前達の方が強い。・・・・・私達の負けだ。」
「???・・・・・・だから何?」
「降伏する。私はどうなってもいいが、妹の命だけは助けてくれないか?」
「・・・・・助ける?」
白雪は止まり、方向を変えてパールの前まで歩むと突然叫んだ。
「貴方達は何をしたか分かってるの?貴方達が彼を悲しませた!!!・・・・・・・悲しませたの!!!!!!!!!
許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。彼をあんなに悲しそうな顔をさせるなんて・・・・・・・絶対に許さない!!!!!!!!」
白雪は言い終わると、キリアにいう。
「・・・・・キリア。とどめを。」
「・・・・・おう。」
そう言うと、キリアは片手を前に出す。
・・・・・因果応報か。
パールは悲しい顔でイルミルが搭乗している【ミルキィ】を見る。
「はい。そこまで。」
一瞬。
男がパールの隣に現れたかと思うと、すぐに二人とも消えてしまった。
「なっ?・・・・・ラフィン!」
ラフィンが、すぐに【ミルキィ】の胴体を剥がすと、その中には・・・・・誰もいなかった。
「・・・・・白雪。」
キリアが白雪を見て言う。
「・・・・・どんな技を使ったのか分からないけど、逃げられた様ね。」
「白雪!キリア!ラフィン!」
白雪達が立ち尽くしていると、アイリとカイトがやってくる。
「アイリ。そっちはどうなの?」
「ええ。上手く陽動出来たわ。クリスタル軍がどんなに早く戻っても1日はかかるわ。」
「そう。それじゃ、レイの所へ行きましょう。」
そう言うと、白雪達は巨大なビルの入口に向かって駆けた。
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