第102話 仲間
三人は、大きな赤い空間の前に立っていた。
その両側には、祠の様な物が建っている。
そして、その三人の足元には複数の鎧を着た天界人が倒れていた。その者達は天界では、かなりの実力の持ち主だが、今は息をしていない。
「・・・・・ここがボスの言っていた場所ね。」
大きな赤い空間を見上げながら、
【スマイルスケルトン】3大幹部の一人、
ミッシェル=スピーチは言う。
「ああ。・・・・・いつもすまないね。
ミッシェル。手伝ってもらって。」
【スマイルスケルトン】のボス、シュバインが隣で言う。
「いいのよ。ボスと一緒じゃなければ、こんな天界になんて来れなかったし、それだけでも手伝う価値はあるわ。」
「そう言ってもらえると助かるよ。」
「で、この入口の結界を解けばいいのね。・・・・・でも、大丈夫なの?」
シュバインは笑みを浮かべる。
「・・・・・私の推測だと、入口の結界を解いたくらいでは、中にいる本丸を開放する事はできないさ。・・・・・私もこの世界でまだ生きたいのでね。だが、もし、それ以外にも存在する何かがいるとしたら、出てくるかもしれないな。」
「フフフ。そう。ボスが何をやりたいのかは分からないけど、面白いから手伝うわ。」
そう言うと、ミッシェルは大きな針を2本取り出す。
その針は、大人の腕位に大きく、それでいて様々な模様が彫られている。
ミッシェルがその針を両側にある祠の様な物に刺した。
ズンッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!
指すと同時に、地響きが鳴り、大きな赤い空間が、更に大きく。そして白い空間へと変わっていった。
「・・・・・終わったわ。」
「ご苦労様。・・・・・それでは、初めてのこの天界をゆっくりと楽しんでくれ。
私はアリバイを作る為に、一回【アークス】へ戻るとするよ。・・・・・レンカ。後は頼みましたよ。」
「はい。」
そう言うとシュバインは、煙の様に消えていった。
「・・・・・さて、行きましょうか!
色々と案内するわよ。ミッシェル。」
「フフフフフ。楽しみね。それじゃ、遠慮なくこの天界を観光させてもらうわ。」
ボスの助手という位置づけであり、
表の顔は、【アークス】の副クランマスター、
リン=エンキュートは、ミッシェルの手を引いて、その場を後にした。
☆☆☆
「あの。・・・・・今なんて?」
僕は思わず皇帝に聞き返す。
「ウム。アイリには皇女という立場を辞めてもらったと言ったのだ。」
「いやいやいや!貴方の娘なんですから皇女でしょう!・・・・・しかも、最後には何てぇ???」
「ハッハッハ!もちろん私の娘だ。ただ、立場を辞めてもらうという事だよ。アルク帝国の皇女としての立場をね。アイリは冒険者になりたいと言う。
叶えてやりたいのが親心だろう。そして、それならば君に預ければ問題ないと思ってね。」
「いやいやいやいやいや!!そんな簡単に・・・・・!おいアイリ!いいのか?」
僕は隣で同じように片膝をついているアイリに向かって言う。
「ええ。・・・・・レイ。これはもう前から私は決めていた事なの。学園都市『カラリナ』を卒業して、魔導士部隊で1年特訓して、ある程度の魔物と戦える様になったら、レイのパーティに入れてもらおうって。」
すると、白雪が言う。
「皇帝。アイリが冒険者になりたいのは分かりました。でも、私達パーティはSSS級冒険者です。
レイが選ぶクエストや依頼の難易度はとても高い物ばかりで、それをこなせる実力がないと、すぐに死んでしまうでしょう。このパーティに加入するという事はそういう事ですけどいいのですね?・・・・・所でアイリ。貴方のレベルは今いくつなの?」
・・・・・白雪~。確かにクエストとかは気に入った物しかやらんけど、僕の選ぶクエストはそんなに難易度高いかなぁ~。皆、余裕じゃん。
何か納得いかないが、おそらくアイリを止めようとしているんだろうな。・・・・・
「・・・・・85。」
「私達が受けるレベルは全て200オーバーなのよ?本気なの?」
アイリは、唇を噛みしめながら僕の方を見て言う。
「わがままなのは分かってる。・・・・・私が入る事で貴方に迷惑がかかる事も。だから・・・・・これから、もっと努力して貴方に近づくわ。」
「そういう問題じゃないのは分かっているんでしょ!?」
白雪が突き放す様に言う。
「私は!!!!!・・・・・・・・・それでも私は貴方のパーティにいたいの!!!」
アイリが叫んだ後、暫く静寂が続いた。
僕は皇帝に言う。
「皇帝。彼女の気持ちは分かりました。意志が固い事も。・・・・・ただ、白雪が言う事はもっともです。これから彼女はあらゆる危険に晒されるでしょう。それでもいいのですか?」
「レイ殿。子供がどんな立場になっても心配しない親なんていない。・・・・・だがね、アイリはずっと皇女として無理をさせていたのだ。君も知っているようにね。
だからこそ、これからは自分のやりたい事をやらせてやりたいのだ。それでもし、アイリに何かあっても、それは致し方ない事だと私もシャーリーも思っている。」
「・・・・・そうですか。分かりました。」
僕は立ち上がって、振り返り、仲間を見て言う。
「・・・・・いいかな?」
「レイ。もう決めているんでしょ。前にも言ったけど私に聞かなくていいわ。貴方を信じているから。」
白雪が笑顔で言う。
「うん!レイが決めたんならいいよ!」
ラフィンが言う。
「レイ。・・・・・問題ない。」
キリアが言う。
「リーダーが決めた事に不満はないよ。これからもね。」
カイトが言う。
「ありがとう。皆。・・・・・それでは、ガイルズ皇帝。承りました。アイリ。今日から僕達の仲間だ。よろしく!」
僕は片膝をついているアイリに手を差し伸べると、それを押しのけて僕に抱き着く。
「ありがとう!!!レイ!!!皆!!!」
「ちょ!どさくさに紛れて飛びつくな!」
白雪が叫びながら、女性陣3人が抱き着いているアイリを僕から引きはがそうとしている。
ハハハ。折角なので、もうちょっとこの感触を味わいたいんですけど・・・・・。
☆☆☆
「さて。それじゃ~、アイリ。今現在、何が得意なの?」
僕は、ご両親と別れを告げたアイリを連れて家へと戻ると、広いリビングでお茶をしながら今後の話し合いをする事にした。
アイリに聞くと、ある程度、剣術や魔法は全て使える様になっているが、特に重点的に鍛えていたのは回復との事だった。
まぁ~学園で習った剣術や魔法は役に立たないだろうし、卒業して1年位では、まだ実戦で使い物にはならないだろう。
「私は、どんなに傷ついた人でも治せるヒーラーになりたいの。」
固い決意でアイリはレイに言う。
「私が狙われた時に、庇ってくれたレイや白雪の傷を治せなかったし、そこにいた学生の人達も助けられなかった。そして・・・・・ティンクも。・・・・・私がもっと上位の回復魔法が使えたら助けられたかもしれないのに。」
「・・・・・そうか。アイリの気持ちは分かった。という事は、剣術や武術じゃなくて、魔術師になりたいんだね。」
「ええ。」
僕はキリアを見て言う。
「キリア。これからは、キリアがアイリを教えてあげてくれないかな。回復特化のヒーラーに。君にしか頼めない事だ。」
するとキリアは頼まれた事が嬉しかったのか、楽しそうに答える。
「・・・・・分かった。でも、私は厳しいよ。・・・・・アイリ。・・・・・ちゃんとついてこれないなら・・・・・すぐに止めるから。」
「ええ!分かったわ!ありがとうキリア!」
・・・・・このパーティの一番の懸念材料は、キリアに何かあった時だ。キリアは、死なない限りどんな状態でも、魔法で元の体へ治すことが出来る。超レアアイテム【奇跡の薬】の様に。
だからこそ、キリアが倒れた時に代わりに回復してくれるメンバーがいればと思っていた。白雪もある程度は回復を使えるが上位の回復魔法は使えない。
アイリがキリアの回復魔法をある程度、学ぶ事が出来れば安心だ。
「よし!アイリの方向性はこれで決まったね。今後の冒険はアイリをなるべく早く僕達のレベルに近づける様に、鍛えながらやっていこう。」
「オ~!!!」
皆が賛同する。
僕達が行くクエストや依頼の大体は魔物のレベルが200以上ある。多分、一緒にいればすぐにレベル100までは到達するだろう。
前衛は僕と白雪、ラフィンだから、よほどの事がない限り、後衛まで危害が及ぶことはない。いざという時は、カイトやキリアもいるしね。
皆で次の冒険の話をしていると、扉が開き、執事のセメルトが入ってきて僕に言う。
「レイ殿。お客様がいらっしゃいました。」
「お客様?」
僕は応接室へと行くと、そこにいたのは・・・・・・・なんと、ロイージェだった。
「ロイージェさんじゃないですか!」
「お久しぶりです。レイ様。」
僕は、ロイージェの元へと行くと、笑顔で握手をする。
ロイージェさんと会うのは、妹を学園都市に連れて行ってくれた時以来だ。・・・・・という事は4、5年ぶりか。
「本当に久しぶりですね!・・・・・あの時は妹を導いてくれてありがとうございました!おかげでこの間、彼女は無事、卒業を迎えました。」
するとロイージェも笑顔で答える。
「そうですか。カザミさんは卒業されましたか。それは良かったです。」
「ええ!これもロイージェさんとその主のケイトさんのおかげです。・・・・・ささ!立ち話も何ですから座って話ましょう。コウさん。お茶をお願いできますか?」
僕は応接室の扉で待機しているメイドのコウにお茶を頼むと、すでに準備してあったのか、すぐに僕とロイージェの前にお茶とお菓子を出してくれた。
ロイージェはお茶を飲みながら僕に聞く。
「ところで、レイ様はあれから今までどうされていたのですか?」
「そうですね・・・・・・・・」
僕は、ロイージェさんと会った後の出来事。学園都市や戦争、そして海国の事を話した。
「ほぉ~。これはこれは。たった数年でそこまでの事をされていたのですね。しかも、冒険者の最上位、SSS級までなられるとは。レイ様と会うと毎回驚かされますね。」
「ハハハ。そんな大それた事ではないですよ。」
「そうですか?・・・・・でも、ケイト様に土産話を持っていけるので良かったです。毎回、貴方の話を楽しみに待っていますので。」
ケイトさんとは未踏破ダンジョン『名もなき孤高の城』に行った時以来、会ってない。
あの別れ際に言っていた言葉。
ケイトさんが思う【強さ】を、僕は手にいれられたのだろうか。
「そういえば、ロイージェさんはどうして僕に会いに来たんですか?」
「あぁ。失礼いたしました。つい久しぶりに会ったので、色々と聞いてしまいましたね。・・・・・実は、貴方に依頼があってここに来ました。」
「依頼?」
聞くと、今、天界ではとても不吉な事が起きるかもしれないとの事だった。
それが災害なのか、戦争なのか、何なのかは分からない。ただ、近い内に何かしら起きる可能性が高いのだと言う。
「そこで、天界に行けて、しかもSSS級冒険者であるレイ様に調査をして頂きたいと思いまして、ここに来ました。」
「なるほど・・・・・。」
ここ現界や魔界ならまだしも、天界で何かあるのか?
しかも、何でロイージェさんがそんな事を知っているのだろうか。・・・・・おそらく主のケイトさんだろう。不思議な人だ。
でも、もし何かあるのなら、僕も心配だ。・・・・・何せ、天界はラフィンとカイトの故郷だ。
聞いたのなら、ほおっておけない。
「分かりました。それでは、その依頼、お受けしましょう。」
ロイージェは少し驚いた顔で言う。
「そんな簡単に依頼を受けていいのですか?SSS級冒険者なら引く手あまたでしょう。」
「何を言っているんですか。お世話になっている、ロイージェさんの依頼を断る事なんて僕は出来ませんよ。最優先でやらせて頂きます。天界は仲間の故郷でもあるので。」
ロイージェと僕は、お茶を飲みほすと立ち上がり、握手をする。
「それではよろしくお願い致します。・・・・・調査して、原因が分かって、もしレイ様で処理が出来る様でしたら一緒にお願いいたします。」
「分かりました。」
僕はロイージェを家の外まで行って見送った後、仲間のいる広いリビングへと戻り、皆に言う。
「皆!次の僕達の旅が決まったよ。これから行く場所は・・・・・・・天界だ!」
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