第83話 SSS級





SSS級。






冒険者の等級で最上位の証。



それは、全てのクエストを受注でき、更に、冒険者協会で発行されない、特別な国家級、世界級のクエストを唯一受ける事の出来る等級。



全世界でまだ9組しか存在しない等級であった。






「SSS級ですか?」



突然、思いもしない事を言われたので、聞き返してしまった。



「ああ。君達ホワイトフォックスは、挑戦できる資格を十分に持っているのでね。」



「というと?」



「SSS級に挑戦できるには、条件があるのだ。・・・・・それは国の推薦を5つ貰う事。

 大国の推薦なら3つ。中国の推薦なら2つ。小国の推薦なら1つとしてカウントされる。

・・・・・君達には、アルク帝国で3つ。アルメリア国で3つ。ピリカ国で2つ。ルーン国で1つ。

合計9つもの推薦を貰っている。こんなに推薦をもらっている冒険者は歴代で初めてだ。」






えっ。知らんかったわ。






「複数の国の推薦を貰うという事は、冒険者としての最大の信用の証。国の依頼も安心して頼めるという事なのだよ。」




なるほどねぇ。




「そこでだ。十分に資格を持っている君達に、毎年1度行われるSSS級試験を受けてみないかと思ってね。」



「はぁ。」



「どうだろうか。この試験は丁度来月にあるのでね。これを逃すと来年まではないし、我々協会としても何としても10組目のSSS級冒険者を誕生させたいんだ。

 今回は、豊作でね。君達の他にも、あと3組も手をあげている。もしかしたら10組以上になるかもしれないと期待をしているのだ。・・・・・ぜひ、挑戦してくれないか?」





・・・・・う~ん。とりあえず、シェリーさんに会ってクエストを受けて、この地で冒険をはじめようと思ってたからなぁ。

でも、冒険者の最上位か。このパーティを有名にしたいのも僕の目的の一つだ。冒険はいつでもできるし、せっかく資格があるんなら・・・・・。





「分かりました。その試験。受けさせていただきます。」



「!!!そうか!受けてくれるか!!!・・・・・それではよろしく頼む。」




冒険者協会マスターのガーイッシュは、笑顔で僕と握手を交わした。








冒険者協会を出た僕達は、シェリーさんに聞いた、おすすめの宿屋にいた。



コテージになっているこの宿屋は、他と離れていてとても過ごしやすかった。



しかも中は広々としている。



ここを拠点に、しばらくは長居をする事になりそうだからね。それなりにちゃんとした宿屋に泊まりたかったんだ。





うん。これなら大満足だ。





流石シェリーさん。ありがとうございます。



今日は長旅で疲れたから、まずは休んで、来月の試験まで時間があるから、ゆっくりこの街で過ごしますかね。



僕達は宿屋で食事をし、やはり全員疲れていたのか、皆、早めに眠りについた。










☆☆☆










「う~ん。いい天気だ!」




外はとても良く晴れていた。爽やかな風が顔にあたる。



初めて来た大国『オプロス』の首都【サイン】。




今日は、仮面は付けないで、皆で街にくりだして色々と見てまわろうと思っている。



時間があれば、この街にいるであろう、来たら寄ってもらいたいと言っていたプレイヤーの一人、シュバインさんに会いに行くかな。



そして夜は、久々にシェリーさんと一緒におすすめの料理店で飲み会だ。





僕は、宿屋のコテージの前で皆を待ってると続々と出てきた。



「今日は買い物に行きたいな!」



ラフィンが飛び跳ねながら言う。




「・・・・・魔法店があったら是非。」



キリアが裾を引っ張って言う。




「ハッハッハ!レイ!美しいご婦人方がいっぱいいそうだね!」



カイトが楽しそうだ。





・・・・・あれ?





「白雪はどうしたの?」



「うん。何かね。着るのに時間がかかっているみたい。」



「へぇ~そうなんだ。」





いつも最初に僕の方へ来る白雪が珍しいな。寝坊でもしたかな?・・・・・いや、それはないか。一緒に起きたんだからなぁ。




ガチャ。




すると、コテージの扉が開くと、彼女が出てきた。・・・・・花柄のとても綺麗な黒い着物を着て。




僕は暫く息をのんで見ていた。




僕が前にプレゼントをした着物だ。




久しぶりに見た着物を着た白雪は、相変わらず、地球の時にはまずいないであろうこの美しさ。そして可愛らしさ。



男なら、絶対に目を奪われてしまう美しさだった。




「白雪。久しぶりに着てくれたんだ。

・・・・・うん。とても綺麗だよ。」



「冒険だったり学園だったりで、中々着る機会がなかったんだ。・・・・・褒めてくれて、ありがとう。」




赤くなった白雪は言う。




「おお!!ヴィーナス!!!白雪ちゃんは本当に何でも似合うね!!!・・・・あぁ!刺すような目もご褒美さ!!!」



カイトが嬉しそうに言うのを、白雪が冷たい目で見ている。




ハハハ。この二人の掛け合いは相変わらずだな。




でも、白雪は本当に綺麗だった。




学園の時から絶世の美女と言われていたけど、つくづくそう思った。



こんな娘が恋人になったら死んでもいいな。



まぁ~僕じゃ到底つり合わないんだけどね。・・・・・彼女が布団に潜り込んでくるので満足です。



でも、いつか彼氏が出来るのかなぁ。



そんな寂しい事を思いながら見ていると、他の二人から抗議の声があがった。





「あ~!ズルい~!!何でそんな可愛い服もってるの~?」



「・・・・・いいな。それ。」



「ハハハ。それね。まだ二人だけで冒険をしていた時に、プレゼントしたんだ。」





・・・・・それからは、二人の【私も欲しい攻撃】に負けて、僕達は服屋へと向かっていた。



プレイヤーが多いこの街なら、おそらく生産系プレイヤーも多いだろう。



きっと地球にあった普段着や日本の着物もあるに違いない。



派手な街並みを歩いていると、大きな服屋があり、ショーウインドーっぽい所には、可愛らしい服や、着物が置かれていた。




「あったあった!!!キリア!見に行こ!!」



「・・・・・おう。」



「じゃ、動きずらいだろうから、僕は白雪と外で待ってるよ。ゆっくり選んできな。決まったら呼んでね。」



「分かった!!!じゃ行ってくる!!!」





二人は服屋へと消えていった。





「ああっちょっと!・・・・・男の意見も必要だろうから僕も行ってくるね。」



カイトはそう言うと、二人の後についていった。






「まったく。・・・・・元気でいいことだね。」



「フフフ。そうね。」






しかし・・・・・目立つなぁ。






店の前の道で立っているだけなのに、行きかう人達(プレイヤーだろう)皆、案の定、白雪を見て騒いでいる。



こんなに綺麗な子なんていないもんなぁ。



しかも隣にいる僕はごく普通の男だしね。



そんな事を考えながら白雪とたわいのない話をしていると、隣から声をかけられた。





「ねぇ。彼女!ちょっと話できる?」



見ると、スラっとしたアイドル系の男が数人立っていた。天眼で見ると・・・・・うん。プレイヤーだね。



レベルは・・・・・130前後といった所か。



「君みたいに美しい子は初めて見たよ!どうだろう。俺と少し話さないかい?」



その中のリーダーっぽい男が白雪に話しかける。




白雪は冷たい目でその男に言う。



「・・・・・レイと話をしている時に失礼な男ね。貴方には全然興味がないから。どこかへ行ってちょうだい。」





ハハハ。相変わらずの毒舌だな。この対応を見ると、カイトはマシな方だ。仲間と認めているんだろう。





その男は驚き、口をひくひくしながら言う。



「うそだろ?・・・・・俺達を見て何とも思わないの?

俺達は、MMOの時に【魅力】をガン上げして、この街で女性に一番人気の高いパーティ『ラバーズ』さ。」







やっぱりかぁぁぁぁぁぁ!!!

【魅力】が正解だったんだ!







自分もゲームの時にモテたかったから一生懸命上げたんだよなぁ~

・・・・・・・【愛情】を。




まぁ、過ぎてしまった事はしょうがないけどね。




「俺には、まだあと一人、妻を娶れる席があるんだよ。ずっと俺の相応しい女を見つける為に空けておいたんだ。一目見て、胸に電撃が走ったよ。

 ・・・・・お互い知る為に、お茶でもしないかい?」



「さっきの言葉聞いてなかったの??

 バカなの???」





ハハハ。キッツいなぁ。僕が言われたら多分、暫く立ち直れないな。





「まぁとりあえずさ、俺と一緒にお茶しようよ。そうすれば、俺の魅力が分かるからさ。」



そう言うと、そのリーダーらしき男は、白雪の腕を掴もうと手を伸ばす。





伸びる手を白雪は見ながら思う。




・・・・・私に触れていいのはレイだけ。・・・・・どうしようか。切り落とそうか?




白雪が、双剣を出そうとした時だった。



僕が、その男の腕を掴んだ。



腕を掴みながら僕は、彼に向かって言う。



「悪いけどさ。僕の白雪に触らないでくれないかな。」



「なんだと?お前は・・・・・。」



男が僕に向かって話そうとした時に、他の声が割って入る。





「レイレイ!!どうかな!!!!」



「・・・・・見て。」




ん?




男の腕を掴みながら、振り返ると、そこには、着物を着たラフィンとキリアが立っていた。



ラフィンは、ピンクの着物に華やかな模様がされた着物を着て。



キリアは、白い着物にこれまた綺麗な柄がされている着物を着ていた。



僕が買いに行くときに、アドバイスでラフィンはモノトーンじゃなく色のあった着物が。キリアは、黒い髪に似合う、黒か白の着物がいいと思うと話をしたのだが、それを基準に選んでくれたらしい。




「うん。ラフィン。キリア。とても綺麗だよ。」



「へへへ。」



「・・・・・やった。」



「ちょ!ちょっと待ってよ!僕もちゃんと勧めたのに!スルーなんだもんな!」



カイトが後ろから悔しそうに言っている。




「ところで、レイ。その人は?」



「あっ。」



二人に気を取られていて、彼の事をすっかり忘れていた。ずっと腕を掴んだままだ。



僕は、腕を話すと、その男と後ろにいるパーティメンバーが一斉にラフィン達に駆け寄り、言う。




「おいおいおいおい!マジか!皆、超可愛いね!!!俺達『ラバーズ』とどこかでお茶しないかい?」





ハハハ。僕とカイトは無視かい。





すると、ラフィンがイラついた顔で僕に言う。



「ねぇ。レイ。なんかすごくムカつくから、やっちゃっていいかな。」





・・・・・何を?やめようね。君はいつも手が早いから。





早く止めないとラフィンが手を出しかねないと思い、彼らに声をかけようとすると、一人の女性がこちらへとやってきた。





「貴方達。やめなさい。」



眼鏡をかけた綺麗な女性が言う。



「お前は・・・・・。」




『ラバーズ』のリーダーらしき男は、その女性に驚きながら言う。



「ほおっておいてくれないかな。貴方には関係ないでしょ。」



その女性はため息をつきながら続ける。



「はぁ。分かってないわね。貴方達を助ける為に言ったのよ?これ以上続けると、痛い目を見る事になるわよ?MMOの時とは違って痛みがあるの。それでもいいの?」



「何を言って。あいつはレベル100だし他も・・・・・。何だと?見れない?」



「そう言う事。貴方達じゃ到底敵わない人達よ。しかも彼は私の知り合いなの。・・・・・私と相手でもする?」



彼らは皆顔を見合わせて言う。



「ハッ。この街でガチ勢に逆らったりしませんよ。・・・・・行こうぜ。」



そういうと、『ラバーズ』は人混みへと消えていった。





僕は、黙って事の成り行きを見ていたが、終わった様なので、メガネをかけた綺麗な女性に声をかけた。





「ありがとうございます。助かりました。・・・・・えっと・・・・・。」



すると、女性は僕に笑顔で話しかける。



「あぁ。ちゃんと自己紹介してなかったですもんね。私は、リン=エンキュート。『アークス』のクランマスター、シュバインと一緒にいたと言えば分かるかしら。」



「ああ!天武祭の時にシュバインさんと一緒にいた方ですね!」



「ええ。ちょうど歩いていたら、人混みになっててね。覗いてみたら貴方達だったから・・・・・余計な事しちゃったかしら。」



「いえいえいえ!ホント助かりました!しかも丁度良かったです!買い物が終わって、これからシュバインさんに挨拶に行こうかと思ってましたから。」



「え?!!そうなの?!それじゃ、私達のクランへ案内するわ。」






いや~!まさか会えるとは思わなかったな。

探す手間がはぶけた・・・・・・ん?






隣にいる白雪を見ると、顔を真っ赤にしながらうつむいていた。









白雪は、真っ赤になりながら、ずっと同じ言葉を思い返していた。










・・・・・僕の白雪に触るな。・・・・・僕の白雪に触るな。・・・・・僕の白雪に触るな。・・・・・僕の白雪に触るな。

・・・・・僕の白雪に触るな。・・・・・僕の白雪に触るな。・・・・・僕の白雪に触るな。・・・・・僕の白雪に触るな。

・・・・・僕の白雪に触るな。・・・・・僕の白雪に触るな。・・・・・僕の白雪に触るな。・・・・・僕の白雪に触るな。

・・・・・僕の白雪に触るな。・・・・・僕の白雪に触るな。・・・・・僕の白雪に触るな。・・・・・僕の白雪に触るな。

・・・・・僕の白雪に触るな。・・・・・僕の白雪に触るな。・・・・・僕の白雪に触るな。・・・・・僕の白雪に触るな。

・・・・・僕の白雪に触るな。・・・・・僕の白雪に触るな。・・・・・僕の白雪に触るな。・・・・・僕の白雪に触るな。



キャァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!










「あの~・・・・・白雪さん?大丈夫?」



僕が声をかけると、我に返ったのか、赤くなってた顔もスッと元に戻り言う。



「ん・・・・・。何でもない。」




何かあまり触れてほしくなさそうなのでスルーする事にした。






「そうか。じゃ、行こうか。」










僕達は、新鮮な街並みを眺めながら、リンさんの後に付いていった。





















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