第33話 卵とおじいさん
「あぁぁぁ。頭が痛い~」
カイトが頭を抱えてうずくまっている。
今、僕たちは馬車の中で揺られながら塔へと向かっている。
この町から塔へ行くには、馬車か歩きかのどちらかしかなかった。
近くに見えても、歩けば結構かかると昨日の店の定員さんが言っていたので馬車にしたのだ。
昨日カイトは、途中までは・・・・・まあまあ大人しかったが、ある程度お酒が進むと案の定、女の定員さんや他の客に絡みまくっていた。
んで、二日酔いだそうだ。
この緊張感のなさが羨ましいわ。
塔の数キロ手前に崖があり、一本橋があった。
その手前で馬車を降りて、歩いて向かう。
橋を渡ると一気にまた景色が広がり、前には巨大な塔がある。
入口近くまで来て見上げる。
その塔は円形で、雲の上まで続いていた。頂上が見えなかった。
うぉぉ。近くまで来ると、この塔かなりでかい。そして高すぎるだろ。一体何階まであるのか。
「そうだレイ。先に言っておくけど、この塔の最上階は100階だ。」
「はぁ~?100階?!」
まじか。
そりゃ頂上が見えないわけだ。
「でも、よく知っているね。」
「えっ。まっ。まぁ~ね!この塔はずっと調べていたからね。」
何か隠しているな。
でも、ここ数日一緒に過ごしてきたが、カイトはいいやつだ。隠す理由が何かあるのだろう。
ここは聞き流すとしますか。
しかし、ほんとに高いな。
「ん?」
上を見上げていると、何か黒い物が見えてきた。落下している。
「あれなんだ?」
二人も見上げる。
「何か丸い物だよ。レイ。」
「このままだと近くに落ちるね!」
白雪とカイトが答える。
何なのか分からないが、最悪生き物だったらまず助からないだろう。
「白雪。カイト。どちらか、あれの落下を止められるかな。」
「オッケー。落ちる勢いは止められるよ。」
「それじゃ、私が取ってくる。」
「了解。じゃお願い。」
カイトは落下地点にいき、魔法を唱える。
「重力反転魔法。グラン。」
唱えると、彼の周りの小石や草などが上へと浮き上がっていく。
「よっと!」
両手を掲げると彼の周りだけ重力が反転していた。そのはるか頭上に落下してくる黒い物も重力に押され落下速度が徐々に遅くなっていく。
遅くなったのを見計らって、白雪が羽をだし、空を飛んで掴んだ。
僕たちは、白雪が地面に置いたその黒い物をみていた。
それは結構大きく、ボーリングの玉くらいあった。
丸く、真っ黒だが、手をあてると暖かく、生き物が中にいる感じがした。
「これは・・・・・卵?」
僕は言うと二人は
「うん。そうだと思う。」
「これは間違いなく卵だね!」
何で降ってきたんだろうか。
卵といったら白いと思うんだけど、なぜかこの卵は真っ黒だ・・・・・何かカッコいいな。
このまま放置したら流石にいかんな。
「ヨシ!とりあえず何の卵かも分からないから、孵るまでは僕の荷物に入れておくか。」
「それがいいと思う。」
白雪も賛成のようだ。
僕は卵をしまって様子を見る事にした。
さて、ちょっとしたトラブルがあったけど、僕たちは『天の塔』の入り口にいた。
100階か・・・・・どれだけ攻略に時間がかかるだろうか。
そもそも攻略できるんだろうか。
でもカイトを何とか最上階に連れて行ってやりたい。
「いくよ。」
僕は大きな入口の扉を開けて中に入っていった。
☆☆☆
「・・・・・はぁ~。これ、かなり厳しくないか?」
僕たちは今19階にいた。
魔物は1階からすでにレベルが130あった。
僕たちより上である。
しかも、1階上がるごとに、魔物のレベルが1づつ上がっていった。
なので、今の階だと魔物レベルが149だった。
でも何でこの階までこれたかというと、僕と白雪の実力ではなかった。
「おっ!魔物が出たぞ!」
カイトが軽快に言う。
一つ目の3m程の魔物だった。
こちらに向かってくる。
カイトは左手を前に差し出すとそこに弓が現れた。
羽が装飾されたとても綺麗な弓だった。
カイトはその弓を使って弦を引く。すると光の矢が現れて、その魔物めがけて射る。
もの凄い風圧とともに射られた矢は、まっすぐに魔物の頭へと命中する。
そのまま魔物は崩れ落ちた。
一発だ。一発で今までの魔物を遠距離からカイトが全て倒していた。
いやいやいや。流石に疑問をぶつける。
「カイト。何で僕と同じレベル121なのに、レベルの高い魔物を一発で仕留められるんだよ。」
「ん?あ~!たまたまだよ!たまたま!多分当たりどころが良かったんじゃないかな!」
カイトが慌てている。
今まで全て当たりどころが良かったのか? んなわけあるか!
ん~。やっぱり何かあるな。
おそらく僕と白雪だけなら、この階までいけるのも怪しい。
仮に100階まで行ったら魔物レベルは200オーバーだ。
とてもじゃないが、頂上まで行けるイメージがわかなかった。
僕も戦いながらレベルが上がればいいが、100からは単純に倒すだけでは上がらないから困っていた。
出直した方がいいのだろうか。
そう考えながら20階へと僕たちは上がっていった。
「ん?」
20階へ着くとそこは草原が広がっていた。
壁や通路が一切なく、草原の真ん中には湖があり、さらにその先には丘があり、上には一軒の家があった。
天井も何か魔法が施されているのか昼間の様に明るい。
塔の中とはとても思えない風景が広がっていた。
「なんだここ?カイトは何か知ってる?」
「いや。こんな所があるなんて初めて知ったよ。」
カイトも驚いていた。
とりあえず僕たちは周りを警戒しながら湖の方まで向かって行くと、釣りをしているおじいさんがいた。
なんでこんな所におじいさんが居るんだ?
「すみません。何をされているんですか?」
僕は聞いてみる。
「ん~?何じゃお主らは。見ればわかるじゃろう。釣りじゃ。」
「ここで釣れるんですか?」
「ほっほ。ここで釣れる魚は、結構美味じゃぞ。」
「そっ。そうなんですか。」
魚がいるんだ。すごいな。
「それで?お主らは何者じゃ?」
「あっ!すみませんでした。僕はレイ=フォックスと言います。この子は白雪。そしてこっちがカイトと言います。僕たちはこの塔の頂上を目指す為にやってきました。」
「ほぅ。頂上とな。」
おじいさんは僕たちを見定める様な目でみて言う。
「無理じゃな。とてもじゃないがお主らでは行くことは出来んじゃろう。そもそも今まで誰一人として行けた者はいないのじゃからの。」
やっぱりか。薄々は感じていた。自分のレベルでは厳しいことが。
するとおじいさんは別の事に興味を持ったのか、聞いてくる。
「ところで、お主とそのお嬢さんの着ている防具はどうしたのじゃ?」
「えっ?これですか?これは、ルーン国でジョイルさんという人に作ってもらいました。」
「ほぅ・・・・・ジョイルが防具と作ったと?」
僕はジョイルさんの出会いと作ってもらった経緯を話した。
「ほっほっほっ!なるほど。そういう事か。お主らはジョイルにほんとに気に入られていたんじゃな。」
「ジョイルさんをおじいさんは知っているんですか?」
「ん?やつとは古い友人よ。」
「そうだったんですか・・・・・。」
という事はおじいさんも数百年生きているのかな?
おじいさんは少し考えるそぶりを見せてから僕に話しかけた。
「レイと言ったか。どうじゃ。お主わしと勝負をしてみんか?」
「勝負?」
「うむ。もし、わしに一撃でも攻撃を当てる事が出来たらお主にわしの技や奥義を教えよう。さすれば、頂上まで行ける可能性が広がるじゃろう。だが、攻撃を当てられんかったら、大人しく帰ることだ。どうじゃ?」
正直、諦めようと思っていたから渡りに船だった。
おじいさんがどんなに強いか分からないが、やれるだけやってみよう。
「あの。おじいさんの名前は何ですか?」
「わしか?わしはルネという。」
「ルネさんですね!それではよろしくお願いします!」
「ほっほ。やるんじゃな。ではわしに着いてくるんじゃ。二人はここで待っておれ。」
僕はおじいさんの後についていった。
カイトが、おじいさんの名前を聞いた時にすごく驚いていたので後で聞いてみよう。
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