第6話 変態、ブラジャーを投げる
『接近戦は私一人で引き受けるわ。どうやら私たちの動きを見切っているようだし、下手に近づくのは危険だわ』
『ですが、それだとセラさんだけに危険が……!』
『私は吸血鬼。不死身よ? まあ援護射撃で負傷すれば、喉が渇くと思うから、後で血を分けてもらえないかしら? 貴女たちほどの魔法使いなら少し吸わせてもらえればすぐに衝動は収まると思うから』
『それは別にいいけどさ、遠隔からドカドカ魔法を撃ち込むだけでアレが死ぬわけ? なんか〝鬼畜度〟がどうのこうのって……マジ気持ち悪いんですけど。早く死んでくれないかな』
『……必殺の剣がある。私にそれを撃たせてもらえないだろうか』
椿の提案に三人の眉がピクリと微動する。
『必殺の剣』ねえ……それじゃあレベルⅢの鬼畜を披露するのはそれにしようかな?
『――時間がかかるのね?』
何かを悟ったセラ。椿に確認する。
『すまない。精神統一に少し時間を稼いで欲しい』
『いいじゃん。それで行こうよ。必殺って言うぐらいだし、すごい剣術なんでしょ? ちなみに援護射撃ってどのぐらいまで許容してもらえるわけ? さすがにロゼちゃんも我慢の限界なんですけど』
どうやらギャル魔女は自分をちゃん付けで呼んでいるらしい。
堪忍袋の緒も切れかけ。そういやパンチラしていないのは残すところ彼女だけだったな。
俺は贔屓をしない主義だ。パンチラはあいつに決定だな。クソ生意気なギャルに厳しい現実を教え込んでやる。
『再生不能になるような極級以外なら何を当ててくれても構わないわ。なんなら
『りょーかい』
りょーかい、じゃねえよ。
極級魔術ってのは世界広しといえど両手両足で数えられるぐらいの魔術師しかいない究極魔術だろうが。
それを声をかければぶつけてくれていいと言う方もあれだが、当然のように会得している新入生もバグり過ぎだろ。
なにこの魔術学院。
年々、入学してくる生徒のレベルが跳ね上がり過ぎだろ。一昨年と比較してもダンチじゃねえか。
俺ばかりに手に余るメスガキどもを預けやがって。いかん。なんか思い出したら腹が立ってきた。
この決闘が終わったら理事長に直談判だ。
《極級魔術》を躊躇なく撃ってくるような特待生クラスは荷が重過ぎます! ってな。
セラは再び『溶融解剖』を発動し、『霧雲』と名付けた姿消しの濃霧を吐き出す。
悪いなセラ。どれだけ姿を曖昧にしようとしたところで俺は感じることができるんだよ――スカートのありかを。
考えるな、感じろってやつさ。
殺意だだ漏れの状態で再び俺に迫るセラ。
言い忘れていたが、《魔眼》『奇跡不逃』はパンチラを逃さないようホワイトアウトの中でもくっきり写っている。
感じなくても普通に視えてるわ、すまん。
「さっきから私たちの《魔法》を避けてばかり。たまには貴方から仕掛けたらどう?」
「……やっすいなー挑発が。もうちょいなんかあるだろ。安いのはお前のパンチラだけで十分だ」
「きゃっ……!」
ギャル魔女が全方位に何かを放つのを盗聴で捉えた俺はセラの避難も兼ねてミニスカをめくる。
やさし! 俺マジでやさしー。
わざわざ敵を逃してあがるとか、デキる男じゃん。なんでモテないの?
本当ならエグい下着をガン見したかったんだが、ロゼが発動しかけている光属性の《魔法》がシャレにならなさそうなのでそちらに集中する。
俺からパンツを凝視する時間を奪った悪い魔女にはお仕置きだ。
さあ、お前の罪を数えろ。
そしてどんなパンツを穿いている? 見せてみろ!!!
「上級光魔法――」
あかん。それはあかんぞギャル魔女。
そもそも光属性を操れる存在そのものが希少にも拘らず、初手で上級だぁ?
ふざけるのも大概にしろよ。
怒った。もう怒ったぞ。どれくらいキレているかって?
ギリモザだと大々的に宣伝しているにも拘らず、いざAVを再生したら秘部どころか太ももぐらいまでモザイクがかかっていたぐらいに腹立たしい。
何がどうギリなのか三時間ぐらい説明して欲しい。俺をここまでキレさせるなんて大したもんだ。褒めてやる!
「上級雷魔術――」
うおい! 乳デカ、てめもか!
「『八咫鏡』」「『雷骸弾』」
ロゼのレーザー照射と乳デカの雷で作られた弾丸の雨。
どちらも《
雨の中、火を絶やさず燃え続けることができる蝋燭があるならぜひご教授願いたい。
俺が持っているのはSM嬢に垂らしてもらうロウソクだけだ。
放たれたが最後。
まさしく風前の灯なわけだが――、
「〝鬼畜度II〟だ。刮目しろよ。世の中にはこういうオリジナルの《魔道具》を編み出す変態もいるってことをな」
俺は胸からブラジャーを二枚取り出し、『八咫鏡』と『雷骸弾』に向かって勢いよく投げつける。
『
発動寸前だった二人のそれが霧散する。《魔力残滓》が《
「はぁっ、なにそれ! ありえないんですけど!」「そんな、ありえませんわ!」
二人の反応は俺にとっては見慣れた光景だった。
――ブラジャーに魔法を喰われる。
今までそんな経験をしたことがない二人は頭の理解が追いついていない様子だった。
そりゃそうだ。超エリートコースを歩んでいれば、俺のような異物に巡り会うこともないだろうからな。
魔法を食らって満足したブラジャーたちは宙を舞う下着の仲間入り。
これが何を意味するのか、頭を働かせるやつがいれば全滅なんて不名誉な結果が違っていたかもしれない。
「――流剣術秘伝『
気が付けば椿の準備が整っていた。
なんと『奇跡不逃』を持ってしても、反応がコンマ数秒遅れる居合い。秘伝だけのことはある。
正直に打ち明けよう。
もしも今この瞬間に針がⅢを指し示していなければ俺の首は胴体から切り離されていたことだろう。それだけに残念で仕方がない。
なぜあともう少し早く間合いに入って来れなかったのかと。
「惜しかったな椿。〝鬼畜度Ⅲ〟だ。剣術名の通りお前が散れ」
指をパチンと鳴らす俺。
次の瞬間――、
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