アイーダマーリア3

「何も知らないことが幸せなのに、何故あなた達は知ろうとするの…?」

ほろり、と彼女の瞳から一筋の雫が零れ落ちた。

クローバー・ノエルは涙を流しながら、ぼんやりと一点の空間を見つめている。

胸元の桃色のブローチを強く握り締めた。

眉が下がる。

そんな彼女を葵たちは見つめた。

葵たちには、なぜ彼女が泣いているのか理解が出来ない。

ただ、どうすれば良いのか分からなかった。

しぃんとした空気が流れる。

数時間前、葵たちはクローバー・ノエルへと協会へと招き入れられた。

協会の中へと入れば、小さな部屋へと案内される。

赤い絨毯がひかれた白い壁の小さな部屋。

木造の長椅子に二人は腰掛けた。

机を挟んで奥の椅子にはクローバー・ノエルが座っている。

クローバー・ノエル。

クローバーのシスター様。

そんな彼女も魔法少女だった。

驚きを隠せない。

そんな彼らの前で、突然クローバー・ノエルは涙を流すのだ。

彼女の瞳から溢れる涙に困惑しているせいか、静かな時間が流れる。

葵は何も言えず、ただ眉を下げるだけ。

そんな中、最初に口を開いたのは要舞だった。

「知らないから幸せじゃない。幸せになりたいから知りたいんです」

眉を釣り上がらせてクローバー・ノエルを見つめる。

「だから、知りに来たんです。教えてください」

曇りのない澄んだ瞳を彼女へと向けた。

そんな彼の姿に涙を拭いつつ彼女は笑う。

「随分と覚悟ができているのね。良いわよ、教えてあげる。私たち魔法少女について」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る