知りたがりニーニャ4

葵と要舞は孤児院へと向かっていた。

向かっていたと言っても、さほど遠い訳では無い。

学園の隣に付属した施設なので、歩いて五分ほどの距離だった。

「それにしても…」

要舞が口を開く。

何かなと葵は首を傾げた。

「大したことじゃないんだけどさ、メリルからなんて話聞いたのかなって。僕も孤児院が魔法少女と繋がりがあるのは聞いたことあったけど、思いつかなかったよ」

その言葉に嗚呼、と葵が頷いた。

「えっと、前にね。魔法少女の原点は孤児院だってメリルが言ってたんだ。そこにいるクローバーの神父様だったか、シスター様だったか…よく覚えてないんだけど、その人に魔法少女について教えてもらったって楽しそうに話してたんだよね」

その言葉にふぅんと要舞が頷いた。

「そうなんだ。知らなかったや…そう思うと僕達ってさ、魔法少女についてもメリルについても何も知らないんだね」

その言葉に確かに、と葵が言葉を零す。

「そうだね、何も知らないや…彼女が誰なのかも。魔法少女が何なのかも…なんのために魔法少女が居るのかも」

考えたこと無かった。

そう、空を見上げてつぶやく。

見上げた空は青く澄み渡り、白い鳥が羽を広げ、羽ばたいていた。

「そうだね…なんでもっと早く知ろうと思わなかったんだろう」

要舞が俯けば、小さく呟いた。

そんな彼の頭へと葵は遠慮がちに手を伸ばす。

その頭を優しく撫でた。

「知れなかったんじゃないかな。きっと、何かを知る時って今のタイミングが一番ベストだったりするんだよ」

だから、君が気負うことは無いからね。

彼の方を向けば、穏やかに微笑んだ。

そんな葵の姿に安心した様に要舞が笑う。

「ありがとう、葵。君が友人で僕は幸せ者だよ」

葵の撫でる手へと頭を押し付ける。

「こちらこそ」

君と出会えてよかった。

そう、瞳を細めた。

孤児院へと歩む足が近づいてきている。

ここで一体何を知ることが出来るのだろう。

葵はぼんやりとそう考えながら、そびえつ赤い屋根の白い教会を見上げた。

どこからともなく、少しだけ冷たい風が吹き抜ける。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る