一目惚れスピリチュアル4

今日、寮で飼っていた金魚が死んだ。

飼育小屋で飼っていたうさぎが死んだ。

鶏は一匹殺されたらしい。

死ぬのは簡単だ。

怖くなければ一歩踏み出すだけなのだから。

玲は図書館で本を読みながら、そんな事をぼんやりと考えていた。

「いいなぁ、そう簡単に居なくなることが出来て。残された側の気持ちなんて知りもしないで」

羨ましい。

ぽつり、と呟く。

一瞬ズキ、と右眼に雷が走ったかのように傷んだ。

思わずガーゼで覆っていた右眼を押さえた。

自殺した姉に会いたくて傷つけた瞳。

そんな事をしても姉に会えるわけが無いのに。

それは己がよく分かっていた。

ふと、図書館の入口へと視線を落とす。

在舞が入ってくるのが見えた。

玲は嬉しくなって頬を緩める。

「なんでかわからないけど、彼も姉さんみたいに放って置けないんだよね」

だって、いつも哀しそうな顔をしてるから。

いつか死んでしまうんじゃないかと思って不安だった。

だから、玲は彼に付きまとう。

少しでも生きる理由になって欲しかったから。

だって、僕は人を放って置けないから。

パタン、と本を閉じれば在舞の元へと向かう。

手を振って笑顔で挨拶をすれば、うわ、という声が在舞の口から零れる。

明らかに嫌そうな彼の姿も嫌いじゃなくて、思わずおかしくなって笑ってしまった。

「やっぱり面白いね、アルくんは」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る