五十二章 ダズリン・エンジェル

これは、栄斗が魔法少女になった日の話。

その日はとても寒く、雪が天から贈り物のように降り注いでいた。

新年に実家に帰った時に、貰ったお年玉で新しく買い換えたスマートフォン。

そんなスマートフォンに一通のメールが届く。

最初はただの広告だと思っていた。

魔法少女という意味も分からない。

数日、無視をしていた。

けれど、脳内にこびり付いた手紙の内容が忘れられなくて、栄斗は寝台へと寝転びながら再びメールを開く。

『おめでとうございます!今日からアナタも可愛いかわいい魔法少女です♡

さあ、アナタの願いは?』

メールの内容は全くわけが分からなかった。

ただ、願いを打ち込まないといけないという事に、この時の己は非常に心惹かれる。

心の奥底の蟠りを解放してしまいたかったのかもしれない。

そして、ゆっくりと深呼吸すれば『人に嫌われたくない』と、たどたどしく打ち込んだ。

カツン、と机の上に置いてあった指揮杖が音を立てて床へと落ちる。

それを拾おうと手に取った瞬間だった。

栄斗の身体が白い光に覆われる。

気づいた時には姿が少女へと変わっていた。

その日、彼は魔法少女になったのだ。

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