トワ・エ・モワ3

夜。

天気が良く、月が綺麗な夜。

夕食を食べ終わり自室へと帰る。

勉強机の前に座りながら、栄斗は窓の外を見上げていた。

勉強ノートを広げつつ、ぼんやりと空に浮かぶ月を眺める。

月は大きく、きらきらと輝いていた。

くるくると手に持っていたシャープペンシルを回す。

ふと、エンジェフラワーの事が脳裏によぎる。

この間の金曜日、彼女と話した内容を思い出した。

彼女が会いたかった人は一体誰だったのだろう。

この学校の人なのだろうか。

そう、考えると心がモヤモヤとして仕方がなかった。

本当は僕だけを見て欲しかったのに……

でも、エンジェフラワーが栄斗を見てくれないことは百も承知。

だから、せめて魔法少女の自分だけ。

あの姿のエイトだけでいいから見て欲しかった。

彼女に愛されたい。

嫌われたくなんてなかった。

あの時、自分だけを見てほしいと言いたかった。

でも、そんなわがままをエイトが言えるはずも無い。

だって、言わない方が正しいから。

エンジェフラワーに嫌われないためには、気持ちを伝える選択肢はない。

空気を読めば、何も言わずに笑顔で彼女の横に立つという選択肢が正しかった。

「エンジェを誰にも盗られたくないな」

ぽつり、と言葉が零れる。

ふと、栄斗は、エンジェフラワーと出会った日を思い出した。

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