シュシュ・ア・ミティ2

今日も何事もなく学校が終わる。

変わったことといえば、今日の要舞の日常に葵が居なかった位だ。

「イル、葵くんと何かあったの?」

今日一緒にお昼食べてなかったじゃない。

大丈夫かと心配そうに在舞が問いかける。

その言葉にバツが悪そうにヘッドホンで耳を塞いだ。

「別に……」

当たり障りのない返事をする。

正直、今の自分には関わらないでほしい。

モヤモヤとした想いが胸を支配する。

昨日の自分の行動を思い返した。

確かに、凄く答えずらいことを言った自分も悪い。

でも、ここまで避けなくて良いじゃないか。

昨日まで積み上げてきた関係が一瞬にして崩れたみたいで悲しくなる。

少しでもいいから葵に会いたかった。

泣きそうになる。

あの時、首を縦に振って欲しかった。

でも、彼が首を振ってくれることはなく、ごめんと言われ立ち去られただけだった。

夜の食堂は人が沢山いて賑やかだ。

所々で生徒の笑い声が聞こえてくる。

要舞もトレーに夜ご飯を載せてきたが、全くもって食べる気がしなかった。

お腹が空かない。

冷めきった豚のしょうが焼き定食が目に映る。

はぁ、と溜息をついた。

不意に、トントン、と背中を突っつかれる。

きっと在舞だろうと思って無視をする。

トントン、再び背中を突っつかれた。

うるさい、絶対振り向いてやるもんか。

トントン、トントン、何度も背中を突っつかれる。

だんだんイライラとした感情がせり上がってきた、

「アル、しつこい……っ……!?」

肘でその手を払う。

茶色の瞳と目が合った。

目の前に居る少年を見て身体が固まる。

ゆっくりとヘッドホンを外せば、丁寧に膝へと置いた。

「や、やあ、要舞くん」

眉を下げながらこちらを向く少年。

「葵……」

思わず口から声が零れた。

葵は申し訳なさそうに、昨日ぶり、と目を伏せて瞳をキョロキョロとさせる。

そして、覚悟が決まったのか要舞のことを見れば問いかけた。

「ちょっと、良いかな?」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る