煌めきは天から降り注ぐ3

「えっと、……あった、これかな」

玲が本に書かれたひとつの単語を見つければ指を指す。

玲の指の先。それを見詰めれば在舞は頷いた。

「確かに、これかも……じゃあこれを書けばいいんだね」

ありがとうと小さく礼を述べれば本に書かれた単語をノートに書き写す。

よかったと玲が安堵の息を吐いた。

「どういたしまして。これ探すの難しいよね。僕も中々見つけられなくて大変だったよ」

見つかってよかったとくすくすと玲が笑う。

先程、図書館で出会った二人。

自己紹介を終えて、玲と一緒に在舞は課題をすることになった。

図書館に備え付けられた木造のアンティーク調の机。

椅子は硬く、長時間座ってられないなと在舞はぼんやりと考える。

そんなことを考えながら、ノートに課題の答えを書き写す。

今のところ玲のおかげか課題は順調に進んでいた。

彼の教え方は世話を焼くと言ってきただけあってか、とてもわかりやすい。

人に教えられるなんて凄いなと在舞は玲をぼんやりと見つめていた。

こちらの視線に気づいたのか玲がふふ、と笑う。

首を傾げれば在舞に問いかけた。

「どうしたの?そんなに見つめて」

無意識だった。

玲をずっと見ていた事を言われて初めて気づく。

その言葉が恥ずかしくて、在舞が視線をずらした。

「み、見てないし……」

なんだよと、逆に在舞が玲に問いかける。

その言葉に玲が笑った。

「特になんにもないんだけどさ、アルくんって面白いね。もっと早く知り合いたかったなぁ」

そしたらきっと学園生活はもっと楽しかっただろうに。

そう呟けば、目に当てていたガーゼへと手を添えた。

何気ない彼のその言葉。

向けられた好意に在舞が照れたのか頬を紅く染める。

「そ、そう……ほら、そんなことはいいからさ、次教えてよ」

誤魔化すようにノートに顔を移す。シャーペンでガリガリと文字を書き綴った。

そんな在舞の姿を玲は瞳を細めて見つめる。

机に肘を着いた。

窓から差し込む光が玲を照らしている。

ちら、と在舞は玲の方を向いた。

こちらを見つめる彼の姿は、何故か分からないけれど、どこか懐かしそうで、寂しそうで……愛おしそうだった。


やっぱり、変なやつ。


そう、小さく心の中で呟けば課題に集中する。

何故か分からないけれど、玲と一緒にいるこの時間はとても心地が良かった。

玲が紅いリボンに指先を触れさせればくるくると指に絡める。

そして窓の外を見れば小さく呟く。

「こんなにも、辛くない日は久しぶりだな……ありがとう、アルくん」

窓から差し込む暖かな光。

そんな光を玲はじ、と見つめた。

玲の呟いた言葉。

集中してノートの書き取りをしていたせいか、その言葉が在舞に届くことはなかった。

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