それは紅いプリマドール2
すっかりと夏の暑さも抜け、涼しくなった頃。
紅葉が色づく秋のこと。
そんなある日、要舞は交通事故に巻き込まれ入院をした。
学園から帰る途中の道で、歩道に突っ込んできたトラックに友人の御影と巻き込まれて大怪我を負ったらしい。
幸い、要舞は命に別状は無かった。
しかし、御影はトラックに積まれていたポールに身体を貫かれていたようで、この世を去ってしまったらしい。
そう、在舞は聞かされる。
その日からだった。要舞の様子がおかしくなったのは。
病院の先生によると、要舞を御影が庇い、亡くなったショックで記憶が一部飛んだのではないか、ということだ。
病室へと入ると、包帯だらけの要舞がいた。
頬にガーゼが貼られており、痛々しい見た目に思わず目を逸らしそうになる。
要舞がこちらを向く。
ぼんやりと焦点の合わない視線。
くりくりとした丸い瞳には光が灯って居なかった。
思わずショックを受けた。
しかし、要舞はもっとショックを受けていた事だろう。
だって、大切な友人が自分を庇って目の前で亡くなったのだから。
拙い足取りで要舞の方へと向かう。
「イル、すごく心配した…」
恐る恐る在舞は声を掛ける。
「…………」
要舞は黙ったままだった。
「えっと…その…御影くんの事は残念だけど…さ。…イルが無事で僕は良かったって、思う……よ…」
上手く声を掛けられなかったと、不謹慎だよね、ごめん…と小さく呟いて謝る。
そんな在舞の横でずっと黙っていた要舞が口を開いた。
「御影って、誰…?」
風が病室へと吹き込む。
ゆらゆら、と彼らのブロンドの髪が揺れた。
淡々と告げられる彼の言葉に在舞は身体から力が抜けた。
その場へと崩れ落ちる。
「それに……君も誰…?どうして僕はここに居るの…?」
怯えているのか、自身の肩を抱え込む。
そんな要舞の姿に、在舞の顔が青ざめた。
「そんな……」
在舞が絶望した瞬間だった。
その日から要舞が在舞に対してよそよそしくなる。
あんなにも優しかった要舞。
あんなにも自分を好きだと言ってくれた要舞。
誰よりも自慢の大切な人双子の兄弟。
その姿の面影は無くなっていた。
一筋の涙が在舞の頬から零れ落ちる。
夕日が沈み始めた。
遠くの方でナースコールの鳴る音がする。
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