十六章 それは一輪の花

ここは中庭。

一年生達が昼食を食べに集う場所。

今日も三人でベンチに横並びに座り購買のパンを食べていた。

「そういえば、皆さんはきょうだいは居ますか?」

話題を切り出したのはゆうきだった。

「兄弟かぁ、ボクは居ないなぁ」

憧れはするけど、と之彦がサンドイッチの袋を開けながらゆうきの方を見る。

「もしかして、子音くんの日記?」

こてん、と首を傾げた。

「はい、それで皆さんには兄弟が居るのかと思いまして……後、きっと僕達の願いからもというか、僕や子音くんからの願いを考えると大切な人の為に魔法少女になる時願ったんじゃないかと……」

憶測ですけど、とゆうきは苦笑いする。

あー、と之彦が頷いた。

「ゆうきくんも大切な人の為に願ったの?」

「そう、ですね……間接的には大切な人、君たちを守るために強くなりたい、と願いました」

ゆうきの言葉に之彦が微笑む。

「そうなんだね、ありがとう、ゆうきくん」

嬉しそうにゆうきの頭を撫でる。

「標くんは……」

ずっと静かに黙っていた標の方を見る。

考え事をしていたのかぼう、としていたのかパンの袋も開いてはなかった。

「標くん、標くーん?」

ふりふり、と之彦が標の前で手をヒラヒラとさせる。

「おっ、なんの話しだったんだ?」

悪い、聞いてなかったと標が謝る。

大丈夫ですよとゆうきがにこりと笑った。

「兄弟や大切な人がいるかって話してたんです」

「悪い悪い…………大切な人、な」

標が黙り込む。

「聞いちゃまずかったですかね……」

すみません、とゆうきが謝る。

慌てた様に標が首を横に振った。

「いやいや、そんなことねぇよ。……そうだな、お前たちには話してもいいかもしんねぇ……」

聞いてくれるか?と首を傾げながらメロンパンの入った袋を開ける。

「実は、俺には双子の姉弟がいたんだ」

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