お誕生日にはケーキが付き物で2

ふわふわ

キラキラ

可愛い

可愛い

ケーキの上に刺されたロウソク。その上で揺らめく炎たち。

そのケーキを囲うようにして数人の男子高校生が手を叩きながら楽しそうに歌い出した。

ハッピーバースデートゥーユー

ハッピーバースデートゥーユー

ハッピーバースデー

ディア

橘くん

ハッピーバースデートゥーユー


盛大な拍手と共にふう、と強い息の吐かれる音がする。

その拍子でロウソクの上で揺らめいていた炎がスン、と消える。

今日は橘 璃音の誕生日。

その日のために標たちは様々な準備をしてきた。

「おめでとう、橘!祝えて良かったぜ」

嬉しそうに標が笑う。

その言葉にハハッと笑いつつも璃音が嬉しそうに眉を下げて笑う。

「おう、サンキュ。悪いな……こんなに祝って貰って」

ありがとう、と再び言えば紙カップを手に取る。

その中にゆうきが買ってきたコーラを注ぎ入れればごくごく、と一気に飲み干した。

「良いんだよ。ボク達がしたかったことだから……急に呼び出しちゃってごめんね」

びっくりしたよねと申し訳なさそうに言う之彦にふるふると璃音は首を横に振った。

「大丈夫大丈夫構わねぇよ。嬉しいから安心してくれ」

にこり、と笑えば安心したように之彦が笑った。

その様子に璃音の前に座るゆうきがにこにことその光景を見つめている。

そして目の前にあるケーキへと視線を落とせばキラキラと輝かせた瞳を標へと向けた。

「そろそろ、ケーキ、食べませんか?」

その言葉に標がそうだな、と頷く。

「おう、任せてくれ!」

元気よく包丁を手に取ればケーキを四等分に切り分ける。

しかし、不器用なせいか微妙に大きさが違うケーキに之彦は思わずくすくすと笑った。

「標くん、大丈夫?代わろうか?」

心配そうに之彦が標に問いかけた。

いやいや、大丈夫だと標が頑張ってケーキを切り分ける。

「美味そうだな……」

ケーキを見つめつつ璃音が小さな声で呟いた。

「だろ!寮に帰る途中に商店街があるだろ?そこの『フランボワーズ・トルテ』って店で買ってきたんだよ。あづきさんが作ったケーキだから美味しいこと間違いなしだぜ!」

その言葉にへぇ、と璃音が頷いた。

切られたケーキを之彦が皿に乗せていく。

四分に切られ、それを逆向きにしてくっつけ直したハート型のいちごは可愛らしく、思わず心が楽しくなる。

「標くんってさ、あづきさんと仲良いよね」

よく標くんの口から聞くなぁと之彦が問いかけた。

ゆうきがケーキが乗っていたトレーに付着したピンク色の可愛らしい生クリームを指先で掬い取る。それを舐めれば幸せそうに微笑んだ。

之彦の問いかけに標が頷く。

「そうだな、あづきさんは従兄弟なんだ!昔からの知り合いなんだぜ」

ふふんと得意げに腰に手を当てて胸を張る。

「へぇ!そうなんだね。だからよくそのケーキ屋さんに通ってるんだ」

知らなかったやと之彦が笑う。その横でへぇ、と璃音が感心した声を零した。

「みんな、ケーキどうぞ。ひとまず食べようか」

皿に乗せたケーキを配り終えれば嬉しそうに之彦が手を手を合わせる。

「いただきます」

ケーキに祈りと感謝を。

そう、呟いた。

フォークで可愛らしいピンク色のケーキを崩す。それをフォークに突き刺せば口へと運んだ。

ふんわりとした食感。

口いっぱいに広がる甘い味。

幸せそうに四人が微笑んだ。

璃音は三人を見つめれば眉を下げ、己の左耳に付いたピアスをそっと指先でなぞる。

「みんな、お前達みたいに優しかったら良いのにな。そしたら、俺もこんなに苦しまなくていいのに……」

そう、みんなには聞こえないくらいの小さな声で呟いた。

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