カランコエはまるでアナタの様で3

入学式の前、先に寮の部屋に荷物を置こうと標が嬉々揚々勢いよく自室になる部屋の扉を開く。

「わ、びっくりした」

優しく穏やかな声が部屋に響いた。

ハーフなのだろうか、薄い緑のような灰色のような瞳、茶髪の長い髪を後ろに一つに束ねた可愛らしい顔つきの少年が驚いた顔でこちらを見ていた。

「悪い、先客がいたんだな」

驚かしちまったと申し訳なさそうにゆっくりと扉を閉める。

「はは、大丈夫だよ。君は……同じ部屋の人?」

彼が首を傾げて問いかける。

こく、こく、と頷いた。

茶髪の彼がこちらへと手を伸ばす。

「僕は之彦、月見之彦よろしくね」

君は?と首を傾げて問いかける。

「標だ。双葉標」

じっと之彦を見つめて自己紹介をする。

そんな眼差しに照れくさそうに之彦が笑う。

「そっか、じゃあ……んーと、標、くん?かな」

そう呼んでもいいかと首を傾げて問いかける之彦の姿に勿論だと頷いた。

伸ばされた彼の手を握り締める。

「おう、よろしくな、之彦!」

何も変哲もない出会い。

優しい君との、心温まる出会いは、後々、標の心を何度も救うことになる。

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