ハートのエースはジョーカーは6

メリルだけが取り残された温室。机の上には閉じられた本。

そっと、その上へとメリルは手を重ねる。

「早く幸せになってくれないかなぁ……☆」

がさ、と遠くから茂みをかきわける音がした。

「だれ……?」

メリルがそちらを向く。

黄緑の髪。ツーサイドアップに結ばれた所は水色に染まっている。半開きの瞳はまるで新緑のように染まっていて、引きずり込まれそうになる。白い、ウェディングドレスのようなふんわりとしたワンピース。脚には白いリボンが巻かれており、何故か裸足だった。

メリルが口を開く。

「あ、ドレッシングちゃん来たんだぁ☆」

メリルが嬉しそうに微笑んだ。

「……」

しかし、彼女は無表情のままメリルを見つめている。

「二年生だから修学旅行に行ってたと思ってたよ!サボったんだね☆」

イケない子☆とメリルがドレッシングの方に歩み寄れば肩と肩を擦り合わせた。

「ねぇ、丁度良かった!ひとつ頼まれてくれないかな☆」

上目遣いでドレッシングと呼ばれた少女のことを見上げる。

静かにドレッシングが口を開いた。

「なにすればいいの……?」

にこり、とメリルが笑う。

「それはね____」

強く降り出した雨の音が彼女の声を掻き消す。

辺りは夕方とは思えないほど薄暗く、どんよりとしていた。



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