ハートのエースはジョーカーは3

「みんなー!おまたせ☆メリルちゃんだよ!」

元気にしてたかなー?ときゅるるんとした可愛らしい声が温室に響き渡る。

「あ、メリルちゃん、今日は遅かったですねぇ。来ないかと思っちゃいました」

エンジェフラワーがふりふりと手を振る。

軽いステップを踏むような足取りで温室へと入ってきた。

「メリル、今日も見つけたの?」

今日の収穫はどうかしらとリリーがメリルの方を向いて問いかける。

「そうなんですよぉ、リリーちゃん!今日倒してもらうドリームイータはこちらです☆」

にこ、とメリルが笑う。

彼女の手には『いざゆかん、不思議の国へ』と書かれた本。冒険系の物語かな、とユキは首を傾げた。

「今日は誰が行きますか☆」

その言葉にうーん、と悩む三年生達。

「私は最近戦ってないから身体訛ってて戦えないかもしれないわ」

リリーが首を傾げつつちら、とメアリーの方を見る。

「わ、ワタシだって……お茶を淹れる事しかしてないから……ね、エンジェちゃん」

ちら、とエンジェフラワーを見つめた。

「えー、私は今日はパスです。今日はこの後エイトちゃんに麻雀教える予定があるんですもん」

無理ですとエンジェの腕に巻き付くエンジェフラワー。困ったように笑うエイト。

「そう、みたいだから僕もパス、かなぁ……メルルちゃんは?最近良く行ってるよね」

エイトがメルルの方を向く。

「パス、今日は予定があるから」

その言葉にエイトがきょとんとした。

「予定?珍しいね」

メルルが空を見つめつつ小さく呟いた。

「そう、大切な人のお墓参り」

その言葉に申し訳無さそうに眉を下げる。

「そうなんだ……聞いちゃ悪かったかな」

メルルの言葉に申し訳なさそうにエイトが呟いた。

メルルはふるふる、と首を横に振る。

「別に、大丈夫よ。毎週行ってるの」

だから気にしないでとメルルがエイトの方へと向き、微笑んだ。

「よっぽど大切な人だったんだね」

その言葉に目を伏せて下を向く。眉を下げながらメルルは笑顔を作った。

「そうね、とても、とても大切な人よ」

だから、ごめんなさい。今日は行けないわ。

メルルが謝る。

「別に謝らなくていいんのよ、メルル。誰にでも大切な人は居るわよね。ワタシもそういう風に想われたいくらいだわ」

そう、にこやかにリリーが笑う。

「リリー……」

リリーの言葉にメアリーは彼女へと手を伸ばそうとした。しかし、その手が届くことはなかった。

「……という訳だから、メリル。三年生は今日は非番でお願いするわ」

よろしくとメルルが手を振る。

「そっかー☆それなら一年生に頼もうかな!一年生はワタシのお願い断らないでくれるよね☆」

こくこく、と頷く一年生達。

逆らえるはずがなかった。


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