ハートのエースはジョーカーは2

「う、ぁ、負けた……」

メルルが残ったのランプをぎゅ、と握りしめて顔を歪める。

そして机の上に顔を突っ伏した。

「メルルちゃんよわぁい!やっぱりトランプヘタですね」

エンジェフラワーがによによと口元に手を当てて笑う。

「弱くて悪かったわね……」

ぷくり、とメルルが頬を膨らました。

まあまあ、とエイトが二人を宥める。

ふと、リリーが空を見上げた。

透き通るガラス張りの天井。天からの恵みが降り注いでいる。

「あら、雨降ってる」

その言葉に皆上を見上げる。

「あ、ほんとだ……どうりで音がすると…」

びっくりだわとメアリーが温室の屋根に叩きつける雫を見つめる。

「メアリー……それは気づきましょう……」

思わず呆れたようにリリーが溜息をついた。

しとしと、と降る雨は静かに窓へと降り注ぐ。

「雨だと気分もどんよりとしますね」

シモンが机に散乱したトランプを集めつつ空を見上げる。

「ワタシ、アメ、キライ……ジトジト、カラダ、ヌレル」

ユアがいやいやと首を横に振る。

「早く晴れるといいですね……」

ユキが手と手を合わせて空に祈る。

ふと、視線をリメの方へと落とせば、何処か浮かない顔をする彼女の姿。

「大丈夫ですか、リメくん」

ユキは心配そうにリメに問いかけた。体調でも悪いのだろうか。

「あ、え、大丈夫!大丈夫だよ!リメ、めちゃくちゃ元気」

ほらね、と満面の笑みを作ってみせる。ぐ、と拳を握れば軽くガッツポーズをした。

「それなら良かったです。安心しました」

遊園地の時から元気が無かったようですから……と心の中で呟く。

あの時のありがとうの意味はなんだったのだろう。

まだ、聞けていなかった。

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