うさぎは今日も月への憧れを胸にとぶ11

「し、子音……」

シモンが声を絞り出すように呟いた。

きゅるりとしたくりくりのお目目。ベージュピンクの髪。低い背。誰からどう見ても可愛くて愛されるうさぎのような男性。彼はユキ達のルームメイトだった。なぜ、彼が此処に?ゆうきの様に迷い込んできたのだろうか。

シーン、と空間が静まり返る。

最初に口を開いたのは子音だった。

「みんなずるいよ……子音だけ仲間はずれだなんて!」

ぷんぷん、と文字が見える怒り方をする。仕草からして可愛いなと思わず抱き締めそうになるのをシモンはぐっとこらえた。

「いや、仲間はずれにしたんじゃなくてね……」

慌てて之彦の口調が出るユア。

「おい、ユア、口調戻ってるぞ」

慌ててシモンがツッコミを入れた。

「ハッ、タイヘン!シテナイ!ナカマハズレ!ユアタチ、シオン、ナカマハズレ、シナイ!」

ユアの姿に大変そうだなとユキは見つめる。

「子音も皆と一緒に女の子になりたい……」

ぷくり、と頬を膨らませつつ皆を見つめる子音。

つんつん、とそんな子音の頬っぺを突っつきつつもシモンはうーん、と考える。

「そんなこと言ってもさ、メリルさんに聞いてみねぇと……」

眉を下げつつごめんな、とシモンは謝った。

「コマッタナ……ワタシタチ、ハンダン、デキナイ……」

しょんぼりとするユア。二人の気持ちを汲み取ったのかこくり、と子音が頷いた。

ワンダーワールドの空にゆっくりと月が登り始めている。


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