うさぎは今日も月への憧れを胸にとぶ2

月を見上げていた

月にはうさぎがいる

よく聞く話だ。

季節は秋十五夜も終わり風が涼しくなってきた頃、ゆうきは魔法少女になった。

リーン、リーン、

鈴虫の鳴き声が耳に吹き抜ける。

友を守れてよかったとあの日のボロボロになった彼らの姿が脳裏に浮かぶ。

もし、あの時、己が魔法少女になっていなかったらどうなっていたのだろう。

安堵と恐怖の間に挟まれる。もしかしたら何も知らずに知らない場所で彼らを失っていたかもしれない。

手の届く範囲で彼らの手を握れて良かった。溜息を付いた。

「どうしたの、ゆうきくん。溜息なんか付いて」

幸せが逃げちゃうよと、之彦が温かいミルクが入ったマグカップをゆうきに差し出した。

「ありがとうございます」

差し出されたマグカップを手に取ればゆうきは之彦に礼を述べる。

「どういたしまして。……眠れない?」

マグカップへと口付けつつも彼の言葉にこくり、と頷く。

「はい……昨日のことがまだ……」

実は最近寝不足だった。

夢を見る内容はいつも一緒で、己があの時二人を助けられなかった夢。

そんなゆうきの不安を拭おうと之彦がゆうきの頭を優しく撫でた。

「嗚呼、なるほど。確かにびっくりして眠れないよね」

夢みたいな出来事だったでしょう、と之彦がゆうきに寄り掛かる。そして、ゆうきの肩に毛布を掛けた。

「それもそうなんですけど……なんというか、一歩間違えたらアナタ達を失っていたかも……って思うととても怖くなってしまって……」

もっと強くなりたいですと呟いた。

彼の言葉にそうか、そうだね、と頷く之彦。

ゆうきの頭へと手を添えればこちらへと引き寄せ、肩に頭を擦り寄せるように置く。

「大丈夫、しなないよ。ボクらは死なない。だから、大丈夫」

約束するよと、笑いながら小指を差し出す。之彦に、はい、と笑い返しながら彼の小指へと己の小指を絡める。

優しくて、気さくで一緒に居て癒されるそんな彼だからこそ話せたことかもしれない。そう、ゆうきは思った。

「ありがとうございます、之彦くん。安心しました」

「そっか、良かった」

眠そうに目を擦るゆうき。

寝ておいでよと、之彦が背中を軽く叩く。

月明かりが見守る様に世界を静かに照らしていた。

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