第一章第34話 決着
「さて、次はそちらの女騎士も人形にしてあげましょう。僕の大切なアンジェに剣を突き立てようとしてくれた報いを受けさせてあげます」
「ひっっ!」
ユーグさんが人形にされ、クリスさんもシャルロットさんもビビッて動けなくなっている。
──── うーん、まずいですね。早いところケリをつけちゃいましょう
私はジョセフに気付かれない様に近づきつつもこっそりと物陰に移動する。そして、そのまま影に潜ると影を伝ってジョセフに近づいていく。たった 5 秒だけだが、吸血鬼としてのこの能力は使えるのだ。そして今は夜、明かりもほとんどない礼拝堂の中ならばどこでも移動できる。
ゆっくりとジョセフがクリスさんに近づいていく。
そして、私は限界が来る前に霧化を使って影の中から舞い上がる。これも 3 秒だけだが使うことができるのだ。私はジョセフの真後ろ、肩のあたりで霧化を解除すると急いでアンジェリカさんの人形をジョセフの肩からはたき落とした。
ドサッ
アンジェリカさんの人形が床に落ちた。一回バウンドしてすぐに止まる。どうやらジョセフから引き離せば自分で動いたりはしないようだ。
私がアンジェリカさんの人形を気にしていると、ジョセフの首がそのまま 180 度回転して私をぎろりと睨んできた。
──── うえぇぇ、やっぱりホラーだ。
「よくも僕のアンジェを叩いたな」
そして次の瞬間、ジョセフの背中から手が生えてくる。それは私の手首をがっしりと掴み、そして人形化の呪いをかけてくる。
「お前も人形にしてやる!」
しまった! 魔法の発動が間に合わない!
「フィーネ様!」
クリスさんの悲鳴が聞こえる。
私の体を光が包み込み、そして私は地獄の苦しみと共に人形に――
って、あれ? 何ともないぞ?
ユーグさん、めちゃくちゃ苦しそうだったけど、なんで? 特に何も起こらないよ?
ま、いっか。
「ええと、悪霊退散で。ターンアンデッド?」
本で読んだターンアンデッドの魔法を使ってみると、光がジョセフを包み込む。ジョセフは少し抵抗していたようだが、すぐに浄化された。いや、昇天したのだろうか。
とにかく、手ごたえはあった。
「ええと、もう大丈夫です。手ごたえはあったのでちゃんと昇天させられたと思います」
わたしはちらりとアンジェリカさんの人形をはたき落とした床の方を見遣るが、そこには人形の影も形もなかった。
「あ、ユーグ様」
シャルロットさんが声を上げる。シャルロットさんの視線の先をみると、いつの間にか人形にされたはずのユーグさんも元に戻っている。
急いでセドリックさんの人形を取り出して床に置くと、セドリックさんの人形も淡い光に包まれ、人間の姿へと戻った。
ということは、三階の部屋に置いてきたあの人も人間に戻っていることだろう。
「クリスさん、地下の墓地に行って、アンジェリカさんの墓地を浄化してあげましょう」
「は、はい。フィーネ様」
地下墓地への入り口は分かりやすく、祭壇の横に作られていた。鍵もかかっておらず、誰でも入れるようだ。
「お待ちなさい。アンジェの墓地の浄化はわたくしが致しますわ。例えわたくしの一方的な想いであっても、アンジェの弔いはわたくしがやりたいのですわ」
うーん、本当に一方的だったのかな?
「じゃあ、一緒に行きましょう。シャルロットさん」
「ええ。よろしくってよ。同行を許可して差し上げますわ」
それにしても、この人は常にマウントをとっていないと気が済まない生き物なのだろうか。
私たちは地下へと歩を進めるのであった。
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