第95話会食兼お見合いに出発前、居間で雑談
朝食後、会食兼お見合い用のスーツに着替えた翼は、出発までの間、居間にて、叔父夫妻と雑談。
叔父晃弘
「観光客がすさまじくてな」
「特に四条一帯や」
「ガイドブックやネットに掲載された店に、大行列や」
叔母由紀美
「それほど味が変わらん店が、数歩先にあっても、特定の店だけに行列や」
「そんな情報に載せられるのも、良し悪しや」
翼
「店も忙しくて、丁寧な仕事ができないのでは?」
「下手に悪意の記事が書かれれば、その店はアウトになる、そんな心配もある」
叔父晃弘
「かつて、某国の人々が、銀座でブランド品を買いあさる、それと一緒や」
「有名なブランド品を買うた、その自慢がしたいだけや」
「大方、一時的なものやけどな」
翼
「そうは言っても、客を迎える店としては、いい加減なことは出来ずかな」
叔母由紀美
「幸い、この京都店には、そんな客は来んけどな」
「全て予約制で、一見の客は入らん、今はその余地がない」
翼
「どれくらいまで、予約で埋まっている?」
叔父晃弘
「そやな、来年の今頃までは、埋まっとる」
「ほぼ、固定客で」
叔母由紀美
「親子代々で、時々、その親戚の子が泊まって、親戚の子の家族までつながる、それが続いとる」
「ありがたいことや、ほんまに」
翼
「食事をして、そのまま泊まる」
「お互い、気心が知れているから、対応も円滑」
「過去のデータを見て準備して、到着した時の顔色や体調を推し量る」
「それで、料理の味付けも、微妙に変えるべきは変える」
叔父晃弘は時計を見た。
「そろそろやな」
翼の顔が引き締まった。
「安全第一にするよ」
叔母由紀美
「翼ちゃんなら、大丈夫や」
「もし、何かあっても、うちが何とかする」
居間に、運転手が入って来た。
「出発のお時間です」
翼と叔父夫妻は、一緒に立ちあがった。
玄関に、従妹美代子も出て来た。
「翼兄ちゃん、心配や」
「梨乃と沙耶も、後で家に来るって」
翼は苦笑。
「大丈夫、何とかする」
「それより、サントノレのケーキが食べたい」
従妹美代子が、にっこり。
「うちが作ります、ご期待を」
従妹美代子の見送りを受け、翼と叔父夫妻は、黒ベンツに乗り込んだ。
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