第61話翼の京都料理界観、佐々木香織とデートの約束
晃の話は続く。
「西陣の料亭も、長い付き合いだ」
「もともと、うちも創業は京都だから」
「ご縁は当然ある」
翼は、晃に聞いてみる。
「兄さん、料理はともかく、可奈子さんが思い出せない」
「圭子姉さまは、気が強いとか、用心したほうがいいって」
晃は、少し笑う。
「ああ、そうかもしれない、少々プライドが高いかな」
「圭子も心配性でね」
「それと、圭子もお前のファンだから、嫉妬しているかも」
「でもな、心配ない、お前らしく普通にやってくれれば」
翼は、可奈子の料亭の名前を聞き、兄晃との会話を終えた。
先方が自分のことを知っていて、自分が何も知らないのでは、失礼に当たると思ったので、パソコンで可奈子の料亭のホームページを見る。
「まあ・・・普通の・・・京都の料亭メニュー」
「普通過ぎるか・・・仕方ないか、京都では」
「余計なこと、はみ出たことをすれば、何を言われるかわからない」
「自分たちで壁を作って、その中でだけの安穏を守る」
「自分たちの出す料理、味付けだけが絶対で至高」
「それ以外の料理は、下民の、犬猫の餌とまでこき下ろす」
「壁の外から料理人を修行に入れては、徹底的にこき下ろす」
「たとえ、自分たちよりも料理技術が高くても、絶対に認めない」
「しょうもない、小さな欠点を見つけては、あざ笑い、いつまでもネチネチと苛め続ける」
そんなことを思っていたら、また胃が痛くなった。
「どうせ可奈子って人も、そんな感じなのでは?」
「うちの金目当てか」
「ブランド目当てか」
「そもそも俺自身に興味があるわけではないだろう」
「本気と言っても、金と名誉目当てで、恋とか愛ではない」
「もともと、こんな業界の縁談に、恋も愛もないか」
「兄さんと圭子姉さんは、いい感じだけど」
それでも、喉が渇いたので、水を飲む。
都内の水道水が心配だったので、宅配の水。
「旨味はないけれど、水道水よりはいいかな」
コップ半分飲んだところで、スマホに着信。
鎌倉で会った、かつての同級生、佐々木香織だった。
佐々木香織
「この前は、ありがとう」
翼
「いや、驚いた、懐かしかった」
佐々木香織
「また、一緒出来る?」
翼
「予定が合えばいいかな」
佐々木香織
「土日は?」
翼は、そのままを言うしかない。
「ごめん・・・実家の仕事で出張する」
佐々木香織の声が沈んだ。
「逢いたいな・・・翼君に」
「ホッとするの、すごく」
翼
「土日以外は、空いているかな、今のところ」
佐々木香織の声が明るくなった、しかし、少し震えた。
「私、一人だけでもいい?」
翼は、少し笑う。
「いいよ、あまり女性が多いとさ、緊張して」
佐々木香織も笑う。
「あはは、そうだったよね、あいつら翼君を囲んでいたよね」
「翼君、カチコチになって逃げたがっていた、わかった」
「翼君、イケメンだし、雰囲気もいいしさ、それで歌はエンジェル、仕方ないよ」
その後、話が続き、翼と佐々木香織は、月曜日に品川のプールでデートすることになった。
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