第14話ヴァンパイヤ美紀(2)

翼の「首筋の貞操」は、ヴァンパイヤ美紀の唇により「風前の灯」。

「実に不純だ」と思った翼は、懸命の防御策を取り、それが功を奏した。


「きゃっ!こら!」

美紀は、弾かれたかのように、翼から腕を解き、身体も離した。。

「突然、脇腹を・・・指でコチョコチョ・・・もう・・・」

「はぁ・・・私・・・脇腹が弱いって・・・」


翼は、「フン」と流し目。

「弱いかどうかは知りません、そこまでの反応も予想しませんよ」

「急にヴァンパイヤになるから、防御しました」


すると美紀は、笑い出す。

「あはは・・・面白いなあ・・・翼君」

「その流し目、可愛い」

「真奈にちらっと聞いたら、繊細でお上品って言ったけれど」

「また違うキャラがあるの?」


翼は、ここでも「フン」と思わせぶりな顔。

「年齢と、恋人の数と、ワインの杯数は数えない」

「そんな言葉がありますね」

「イタリアのことわざだったかな」


すると今度は美紀が「フン」と翼の前に立つ。

「年下でしょ?」

「そんなに恋人いたの?数えられないほど?」

「未成年のくせに、ワインの数?」

「何よ、大人ぶって」

そして、翼のスキを見て、また抱きしめる。


翼は、今回は冷静。

抱かれるまま、抵抗はしない。

「ヴァンパイヤ美紀さんは、抱きつき魔女なんですか?」


美紀は、翼を楽しむかのように、圧迫を強める。

「うん、翼君って、抱き心地がいいなあと」

「翔子からは手を握るまでって言われたけれど、そんなのどうでもいいよね」

「あいつも、変にカチコチなところあってさ」


翼は、それには答えない。

やはり幼稚園からの幼馴染、同調はし難い。


美紀は、言葉を続けた。

「でね、これから朝ごはんを食べてからね」

その言葉で、翼もようやく美紀の背中に腕を回す。

「はい、いかがいたしましょうか?」

すると美紀の胸圧が強くなる。

「お出かけで、海が見たいの」

「港も見たい」

翼は、美紀の希望先を察知。

「元町から坂をのぼって?」

「エリスマン邸とか、ブリキのおもちゃを見て」

「それから・・・丘公園にでしょうか」

美紀の声がトロンとなった。

「うん・・・それでお願い」

翼は、美紀の動悸が激しくなっているのを、胸越しに感じる。


さて、美紀と翼のこれからのデート先は、横浜に決まった。

その前に、美紀が作って来た朝ごはんを一緒に食べる。


美紀

「横浜で洋食、あるいは中華になるから、おにぎりにしたよ」

「ほんのり塩味のおにぎりで・・・中には定番の鮭、昆布」

美紀

「酢飯のおにぎりも作った、食べて見て」

「へえ・・・これ・・・美味しいです、元気が出ます」

美紀はうれしくて仕方がない顔。

「ねえ、翼君、気が合うね、なんか一緒にいて楽しくて・・・」

「もう、ワクワクして、ドキドキして・・・どうしようかなあ」


その美紀の言葉通り、セーターに包まれた豊かな胸も元気に揺れている。

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