第7話真奈(4)

しっかりとしたブランド物のシステム手帳を選び、筆記用具も少し買い、真奈と翼は再び腕を組み吉祥寺の街を歩く。


真奈

「もっとお話したいなあ、お散歩しない?」

「そうですね、井の頭公園の桜を見たいなと」

話はすぐにまとまり、二人はそのまま散歩、井の頭公園に入った。


真奈

「うわーー・・・きれい・・・満開?」

翼も目を輝かせる。

「夢のような美しさ、来てよかった」

「真奈さんのおかげです、こんなきれいなところに」


真奈は、またうれしいので、ますます身体を寄せる。

「当たっている」と思うけれど、そんなことは気にしない。

むしろ、「押し付けて、翼君を赤い顔にしたい」との思いが強い。


そして作戦成功、翼は顔を赤らめた。

「あそこのベンチが空いています、座りましょう」

真奈は、「はい、そうしましょう」と、またうれしい。

何より、翼の赤い顔が可愛くて仕方がない。


ベンチに並んで座っても、真奈は身体を押し付け気味。

翼が耳まで赤くなるのを楽しむ。

真奈

「幸せだなあ、こうしていると」

「はい、僕も真奈さんが素敵で」

「胸がドキドキして」


それでも、春の風はまだ冷たい。

真奈は、身体を更に押し付ける。

「だって翼君の身体って温かいんだもの」

翼は恥ずかしそうな顔。

「慣れていなくて、あの・・・」

真奈

「いいの、デートなんだから」

翼は、ますます真っ赤。

「はい・・・」


少し風が強くなってきたので、二人は喫茶店に入った。

真奈は、うれしくて仕方がない。

「ますます、翼君が可愛くなった、どうしましょう」

翼は、また顔を赤らめる。

「あの・・・真奈さんが、すごくやさしい雰囲気で」

「可愛くて、気を遣ってくれて」

そして、真奈をじっと見る。

「こんな僕で、しっかりお相手できたかなあと」


真奈は、翼のじっと見つめる瞳と言葉に、胸がドキン。

そして今さらながら、翔子の言葉を思い出す。

「真奈の気分転換の相手として、紹介したの」

「翼君は、時間限定のレンタル彼氏」


翼に返す言葉も、悩む。

万が一、「今日だけです」とか言われたら、「嫌われたか」と心配になる。

とにかく、翼と一緒にいることが、うれしくてドキドキして仕方がないのだから。


真奈は、懸命に心を落ち着けた。

「そんなお相手出来たなんて言わないの」

「もう・・・楽しくて幸せで、もっともっと、いろんなお話をして歩きたいの」

「ねえ・・・また誘ったら、一緒してくれる?」


翼は、花のような可愛い顔をして、真奈の手をキュッと握る。

「はい、これで安心しました、真奈さん、こんな僕を喜んでくれてありがとうございます」

「もっともっと、いろんなお話をして、いろんな所を歩きましょう」


その瞬間、真奈の身体全体に、甘美な電流が走った。

そして、真奈の心は、「デートの相手は翼君しか考えられない」、そんな危険な状況となってしまった。

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