第6話真奈(3)

真奈は「ふわとろチーズホワイトソースのオムライス」、翼は「ふわとろチーズトマトソースのオムライス」を注文するけれど、結局は取り分けて食べる。


真奈は目を輝かせる。

「何か、紅白でおめでたいって感じ」

翼は一口ずつ食べて、真奈をほめる、

「さすが真奈さん、こんな美味しいものを教えてくれて」


真奈は、また顔が赤くなる。

「あまりほめないで、ドキドキして困っちゃう」

翼は、真奈をじっと見る。

「真奈さんの食べる雰囲気って、すごく可愛らしくて上品です」


真奈は、「恥ずかしいよ」と言いながら、翼を見て、また胸がドキンとなる。

そして内心、思う。

「やばい・・・ほんとうに・・・この子、可愛いし、癒し系?」

「ほれちゃいそう・・・私のほうがお姉さんなのに」

「この子がそばにいれば、何でもいいよ、ほんと、メチャ可愛い」

「翔子は時間限定って言ったけれど・・・無理かも」


とにかく、この時点で足までフワフワとなるので、懸命に話題を変える。

「ねえ、翼君、大学で入ろうかなって思っているサークルとか部活ってあるの?」

おそらく何も決まっていないと思うけれど、大学に入ってからの翼の動きも知りたい。

できれば、自分が入っているサークルにいれて、愛でて、デートして楽しみたい。


翼は案の定、首を傾げた。

「えっと・・・よくわからなくて・・・」

答えに困る様子も、すごく可愛くてしかたがない。

すると、答えに困った翼が、真奈に聞いて来た。

「あの、真奈さんは、サークルには?」


この質問を狙っていた真奈は、「よし!」とばかりに、ニンマリ顔になる。

「私が入っているサークルは、郷土料理研究会」

「大学には日本各地から学生が来るの」

「その地方の料理を作って食べる、あるいは旅行して食べる」

「その中で、いろんな味、素材、調理法、歴史を学ぶ」

「旅行に行けば、現地の人と、交流を深める」


静かに聞いていた翼が、微笑む。

「わかりました、なかなか魅力的なサークル」

「有力な検討の対象になります」


「入ってくれるかな」と思っていた真奈は、判断に苦しむ。

しかし、あまり無理強いして、嫌われるのも不安。

「楽しみにしている、時折のフリー参加でもいいよ、翼君なら」程度にして、自分を抑える。


オムライスも食べ終わったので、二人は再び手をつないで街歩き。

真奈

「吉祥寺は初めて?」

翼は目をあちこちに。

「はい、人気のある街とは聞いていました」

真奈は翼の手をキュッと握る。

「翼君の手帳を選んであげたいなあと」

翼は意外そうな顔。

「ありがとうございます、よくわからなくて」


そのまま、丸善に入る。

翼が反応した。

「東京駅にもあって、お茶の水にもあるかな」

「漱石の文にも出て来る老舗ですね、確か彼が使っていた万年筆に関係があって」


真奈は、それは知らなかったので、「へえ・・・」と面白そうな顔。


翼が恥ずかしそうな顔。

「漱石自身が、駿河台を下がって靖国通りに近い金華小学校の出身とか」

「それで、往時の小川町と神保町の風景が小説に」


ますます真奈が面白そうな顔になるので、翼は顔が赤らむ。

「あ・・・おしゃべりが過ぎました」

「手帳を・・・選びます・・・」と、真奈の手をキュッと握り返す。


真奈は、この瞬間、また胸がドキンと鳴った。

「マジに面白い、可愛い・・・どうしよう・・・この指、離したくない」

「デートで、こんなドキドキは・・・はじめて・・・少しやばいかも」

「でも、こうしたい・・・」

真奈は翼の手から指を離し、身体を密着気味に、腕を組んでいる。

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