第5話真奈(2)

特に翼にとって違和感のある朝食後は、3人とも同じ大学ということで、履修や教授についての話。

翼にも、親切な助言があるので、几帳面にメモを取る。


翔子

「この子の字は上手いの、子供の頃から」

真奈は翼のメモを覗き込む。

「翔子はど下手で適当、翼君はきれいな字だね、キチンとしている」

「やはり字は性格を表すのかな」


翼は、翔子のムッとした顔が気になるけれど、メモは隠さない。

「何より今日は、真奈さんのご機嫌を取るべき」と思うので、「おほめいただき、恥ずかしいです」と微笑で返す。


すると、真奈が顔を赤くして、翼に迫る。

「ねえ、翼君、引っ越しの整理、手伝おうか?」

「そういうことするの、好きなの」


翼は、この申し出には、少し困る。

「あ・・・朝ごはんを持ってきてくれた上に、それ以上は」


翔子は乾燥終了のブザーで立ちあがった。

「着替えて来る、一緒にやろう」

翼が、まだ戸惑っていると、真奈が含み笑い。

「あら・・・見られてはいけないものでも?」

翼は、思い切り首を横に振る。

「いえ、そんなものは全く」


結局、真奈と翔子に、引っ越し荷物整理を手伝われて、一応終わったのが午前11時。

真奈は翼を見てにっこり。

「いろいろ揃えるものが必要かな」

「吉祥寺デートしよう」


翼は、「それでは本末転倒」と思うので、「いえ、真奈さんの歩きたい場所に」と、慎重に返していると、翔子は、「後はお二人で」と、あっさりと姿を消してしまった。



井の頭線に乗り込むなり、真奈は翼の手を握る。

「ねえ、翼君、お願いがあるの」

翼が真奈の顔を見と、真奈は顔を赤くする。

「今日一日は、真奈さんって呼んで欲しいの」

翼は、柔らかい微笑で返す。

「はい、真奈さん、素敵です」

「可愛らしくてやさしくて親切で」

真奈は、ますます顔を赤くして、キュッと握る。

「もお・・・翼君にそんなお世辞を言われると、ドキドキしちゃう」

「お姉さん殺しなの?」

翼は、困ったような顔をする。

「あの・・・不器用で本音しか言えなくて」

真奈は微妙に翼に身体を寄せ、翼は拒まない。

それでも、真奈の耳が赤くなっているのを確認、少し戸惑う。


二人は、吉祥寺駅で降りて、手をつないだまま、駅北を歩き始める。

真奈

「ねえ、翼君、何か食べたいものは?」

翼は懸命に考える。

「真奈さんが食べたいもので、何でも」

少しありきたりの返事が、不安。

真奈は、また身体を微妙に寄せる。

「それじゃあ、オムライスのお店でいいかな」

翼は断る理由がない。

「はい、楽しみです」と真奈の手をキュッと握る。


オムライスの店は、いかにも女性受けしそうな、お洒落なお店。

真奈

「シェフも女性なの、それで店内装飾も可愛い」

翼は真奈をじっと見る。

「落ち着いた、それでいてお洒落な雰囲気で、ホッとします」

「こんな素敵なお店で真奈さんと、お食事なんて幸せです」

真奈の顔が、また赤くなる。

「もう・・・うれしくて泣きそうになる、翼君」

「あまりほめられると・・・私も幸せで・・・」

真奈は、言葉が続かない。

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