第2話レンタル彼氏の提案

翌朝8時、翼はシャワーの音で目を覚ました。

「翔子さん、昨日は酔って寝たから、風呂は入ってなかったんだ」

そして、また一つ気がついた。

「洗濯機が回っている・・・って・・・どうして?」

どうしたもこうしたもない、翼が洗濯機を回したのではないから、「犯人」は翔子。

「何だよ、いったい・・・」と呆れていると、翔子がバスルームから出て来た。


翔子

「あらーーー!起きたの?翼君!」

「お風呂してシャワーしたの、ああ、洗濯機を貸してもらっている」

翼は、またしても驚いた。

「翔子さん、そのパジャマって・・・僕の・・・」

翔子はニンマリ。

「えへへ、今、下着も洗っているの、意味わかる?」


翼は、思わす顔をそむけた。

呆れて物も言えない。

夜の11時に酔っぱらって押しかけて、勝手に人のベッドで寝て、朝になればお風呂とシャワー、洗濯機を無断使用。

その上、下着をつけずに、パジャマを着られているとは・・・・


翔子は、顔をそむけた翼をクスクス笑う。

「お子ちゃまの翼ちゃんには刺激が強いのかなあ?」

「でも、洗濯終わらないとさ、どうにもならないし」


翼は、ようやく翔子に正対、言葉もきつい。

「ところで、昨日の晩から、何の用?」

「さっぱり、わからないしさ」

「しっかり説明してくれる?」


翔子は、またしても答えない。

バスタオルで髪の毛を拭きながら、キッチンに視線を移す。

「ねえ、珈琲飲みたい」

「あれ、ミルもついている全自動でしょ?」


翼は、またしても「仕方がない」状態。

「言い出したら聞かない翔子」は。子供の頃、幼稚園の頃からよく知っている。

珈琲豆を全自動珈琲メーカーにセットして、珈琲を淹れ、翔子の前に置く。


「はい、お待たせ」

翔子

「ふむ、いい香り、褒めてあげる」


翼も自分の珈琲を飲み始めると、翔子が話し出す。

「でね、昨日ね、大学のサークルの女子会に行ったの」

「それで飲み過ぎて酔っぱらったの?」

翔子

「最後まで聞きなさい!」

「その女子の中に、親友なんだけど、真奈ちゃんって子がいてね」

「うん、喧嘩したの?」


翔子は、翼の頭をコツン、話を続ける。

「そうじゃなくて、真奈ちゃんが、酷い失恋をして、大泣きに」

「それに付き合ってさ、飲み過ぎてさ」

「涙顔で帰すわけにもいかなくてさ」

「それで、ここに来たの?まだ終電あったでしょ?」


翔子は意味深な顔に変わった。

「私のアパートより、翼ちゃんのアパートのほうが、飲み屋から近かった、それがまず一つ」

翼は、翔子の次の言葉に得体の知れない恐怖感、少し腰を引く。

子供の頃から、翔子の意味深な顔には、ロクな思い出がない。


翔子

「そこで逃げない、翼君にお願いがある」

翼は蛇に睨まれた蛙状態。

「お願いって・・・何?」


翔子は、急に真面目な顔になった。

「翼君、真奈ちゃんとデートしてあげて、慰めてあげて」

翼は「え?」と意味不明。


翔子は、真面目顔のまま。

「時間限定のレンタル彼氏、どうかな」


翼は「レンタル彼氏って何?」、全く返事ができない。

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