イチさん
カランカランとしながらドアを開けると、パンをたべる人となにかをのむ人が見えた。
その2人のうしろにはあおがひろがっている。
ごはんのあいだでメイワクかけたとぼくはおもったのに、ようちゃんははなうたをうたったまま、入っていく。
「いあっはい」
ハツオンがうまくないガラガラの声をだしたのはたべていたむらさきの髪の方だった。
「この音は……陽太やな」
いい声をだしたのは飲んでいたアカい髪の方で目を閉じたままだ。
「おのほがおととふん?」
むらさきの目までまえの髪があるおとこのこが目を閉じたままのアカい髪の手をひいてぼくらのまえにくる。
「そう、ゆうまっていうんだ……ゆ・う・ま」
むらさきのカレにわかるように口を大きくうごかして話すようちゃんで2人のヒミツがわかった。
むらさきの方は耳がきこえなくて、アカのおかっぱの方が目が見えないんだって。
「夕馬、
ようちゃんのよびかけにぼくはハッとして、2人にあいさつをする。
「市知さん、十和さん……はじめまして。 朝日夕馬です。よろしくお願いいたします」
ぼくは小さい声になったけど、ちゃんと言ってあたまを下げた。
「おろひく!」
「よろしゅう、夕馬」
むらさきの方……イチさんはクロいハダにしろいはがメダツように笑い、アカの方……トワさんは目もとをクシャッとして笑ってくれた。
「夕馬はこの街に合う髪型に、俺は色褪せてきたから染めて~」
ようちゃんはジブンの家みたいにクロいイスにすわり、ドンとする。
「了解。 じゃあ夕馬はわしがやるから、アホは市知がやってな?」
クロいイスに手をのばしてぼくをすわらせたトワさんはいじわるな顔をしてシッシッと笑う。
「ちょっと、十和くん! アホはないでしょ」
「あい!」
「あい、じゃないのよ市知ちゃん……」
こまったようなようちゃんを見て、ぼくははじめてハハハと笑った。
「楽しいか? 夕馬」
おとなの感じがぷんぷんするひくい声になれなくて、おもわずせなかをピンッとしてへんじをする。
「ふはっ、ええわ普通で。たぶんそんなに年変わらんし」
きいろいタオルをぼくのくびにまきながらきどらずに言うトワさん。
「失礼ですが、おいくつですか?」
「こう見えて22、市知は夜彦と同じだから20か」
つぎのタオルはぼくのかたにかけるトワさんの鼻のヒゲがある顔がまえのかがみに見えて、もっと年上かとおもっていたからびっくりする。
それよりもイチさんはぼくとおなじくらいかとおもっていたから、ええ!と声を上げてしまった。
「あめんなほ!!」
ようちゃんとたのしそうに話していたイチさんはぼくをにらみ、かみつくようにさけんだ。
「ごめんなさい」
ぼくはビクビクしながらあやまる。
「でもな、市知……夕馬のこと、好きやろ?」
ぼくのうでにアカいマントをとおしつつ、トワさんは半笑いして言う。
「あい! あいしゅき!!」
しろいはを見せて笑ってくれたからぼくはありがとうと言ったんだ。
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