望み
「どうしてここまでしてくれるの?」
どうしてやさしくしてくれるのかわからないぼくはうつむきながら言った。
ゆっくりとようちゃんからはなれ、ストンとピンクのじゅうたんに三角座りをする。
「あなたたちとはあったばかりだし、なにもかもがちがうでしょ。捨てられたぼくを弟にするなんていうのは……あたまがおかしいです」
カレらにムダなチカラを使わせてはならないんだ。
カクゴしたぼくは顔を上げた。
「ほしいのはメイヨですか」
やひこをにらむ。
それなのに、やひこの顔はあかくなる。
「オカネですか」
まひるをにらむ。
なぜかまひるもにらんできた。
「チですか」
ようちゃんをにらむ。
それなのに、ようちゃんはほほえんだまま。
どれかをえらぶか、はたまたもっと大きい何かなのかとぼくはキンチョウしながら待った。
「やーひ、今のなに言うてたかわかった?」
さいしょに話しだしたのはまひる。
苦笑いをしながらやひこにきく。
「とりあえず耳には入ってきました」
「せやんな」
ぼくの言い方がワルかったのだろうか、まひるもやひこもくびをまげる。
「ようは? わかってたら解説してや」
こんどはうんうん言っているようちゃんにきく。
「全然わかんない」
「お前がわからんなら、アカンやん」
まひるはハハハと笑った。
「なんか血って言っておりましたので、ようちゃんが吸ってみたらいかがでございましょう。頭が冴えてわかるのではございませんか?」
「あっ、そうしてみようか?」
カレらのことばのイミがわからないぼくがよけられるはずもなく、ようちゃんに左のくびのしたから血をすわれる。
チュプ、チュプ
何時間ぶりかわからないけど、待っていたかのようにうけいれてしまうんだ。
気持ちよくて
温かくて
やさしいんだ。
チュプンとはなても、からだは毛布にくるまれているかのように温かかった。
「で、わかった?」
「めっちゃ美味い」
まんぞくそうに言うようちゃんに明るく笑いだすまひるとやひこ。
この人たちは何ものぞんでいないのかもしれない。
ぼくは今のやり取りからそうおもうしかなかったんだ。
「忘れてたけど、自己紹介。
ようちゃんは左手をふり、右手でカメラを持ってパシャリととった。
それでここがようちゃんの部屋だってわかった。
また部屋を見回したらほんのりピンク色に色づいていたのでカクシンしたんだ。
まひるが19才、夜彦が20才ときかされながら、キミドリのズボンとハイイロのシャツ、アカいイチゴの絵が入った服を3人に着せられたぼく。
「サイズはぼくぅに近かったからぼくぅの服やから。アレンジしたいなら遠慮なく頼んでなぁ」
後ろろは違う果物にしたいし、ズボンはダメージ入れたいしとぶつぶつ言いだしたまひるは服が好きなんだってわかった。
「呉服屋に勤めたらいいのに」
「ぼくぅ犬派やもん」
イミがわからなくてもしずかにしていたら、おなかがなってすぐにおさえた。
たたかれるとおもったのに、みんなはやさしく笑っていた。
「まずはご飯にいたしましょう……腹が減っては戦は出来ぬ、でございます」
おほほと笑うやひこはぼくに手を伸ばす。
ぼくは安心してその手をとり、立ち上がった。
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