第107話 第四章 『カノジョ宣言して、なにが悪い!』(25)

「ちょっと! 何の話です?」

 学術書に没頭していたセクメトナーメンが、いまさらのように突っ込んでくる。

 遅いよ・・・。

 まあ、とにかく反対してやってくれよ。


「何って、妾はいまからハチのカノジョだ。問題あるまい?」


 セクメトナーメンは、脚を開いて手を腰に当て、典型的な威嚇ポーズだよ。

「大ありですっ! だいたいなんですか! お互いの気持ちを確かめ合うプロセスも無くカノジョだなんて!」


 おお、さすがに理系女子!

 恋愛にもプロセスを求めてる!

「とにかく、なりません! だいたいクレオパトラ、あなたは未婚の身なのですよ。それなのに・・・」

「いいではないか! もはや、ここはプトレマイオス朝ではないのだぞ? そんな堅苦しいことを言わなくても・・・妾だって恋をしてみたいのだ」


 いや・・・正確には『恋の真似事』だろ?


「しかし」

「いいではないか! この時代も一目惚れというのはあるらしいし!」


「いいわけないでしょ! クレオはわたしのものなんだから! ・・・って、あっ!」


 とんだ局面で、とんだ告白だ。

 っていうか、本音が出てしまった。

 これじゃあセクメト・・・せっかく反対してくれても・・・説得力無いよ。

 セクメトナーメンは珍しく顔を真っ赤にして、動揺している。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る