第64話 第三章 『護衛するのだぞ? 同居生活は当然であろう!』(23)
「そうだなあ、現代は空を飛ぶことも出来るので、世界中で獲れたものを短時間で運ぶことが出来るんだよ。それに人の代わりに働いてくれる機械、というシロモノもある」
「キカイですか、奴隷ではなくて?」
「そうだ」
「・・・想像がつきません・・・それに空をですって? ナイル川を船で行き交うのとは、スピードが桁違いということ?」
「ははは、セクメトナーメンはやっぱり、技術に興味津々なんだな」と言って、ハチがからかってくる。
「それはそうです。我がプトレマイオス朝は学問で世を為す、がモットーですから」
「そのとおり。我々は史上初めて、武ではなく智を力とする王朝なのだ」
妾も誇らしげに同調する。
・・・と、ハチが豚肉をカゴに入れたところで、精肉売り場のおばちゃんから声が掛かる。
「おにいさん! 今日はこの鳩が美味いよ! 今日の奴は脂がちがう」
この地中海周辺、特に妾のエジプトあたりでも鳩は立派な食材で、良く取引される。
「ハチ! 妾は鳩が大好きなのだ! あ、いや・・・」
しまった。
大好きな鳩、というキーワードが聞こえたので、つい叫んでしまった。
ファラオたるもの・・・恥ずかしい。
うう、やっぱりセクメトのやつがこっちを睨んでいる。
ハイハイ、すみません。
恥ずかしいから目先を変えたかったのに、すかさず売り子のおばちゃんが畳み掛けてくる。
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