第35話 第二章 『さあキスをしよう! 話はそれからだ』(26)
すっかり本物の古代人扱いをして、力学や電磁気学、数学といったところの簡単な説明を始めてしまった。
はじめは、さすがに理解するのは難しいかと思ったが、なかなかいい線いってる。
そもそも学習意欲が高いうえに、元々の教養レベルも高いので、当然なのかもしれない。なんたって、クレオパトラの時代、世界の文明先進国は間違いなくプトレマイオス朝エジプトだからだ。
あ、いや・・・あくまで本物だとすればだ。
俺はふたりの相手をしつつも、本物か偽物かで・・・ますますアタマの中がごちゃごちゃになってきちまった。
・・・・
気が付くと、もう夜明けだ。
参った。徹夜だよ。
だがふたりとも一向に疲れを見せない。
演技でこの集中力は・・・ありえないだろ。
彼女たちは、まだまだ続けたそうだったが。
本当は、何者か分からない人間を部屋に放置して眠るなど、特にこの中東では物騒なことこの上ないが、少なくとも俺を救ってくれた人だ・・・問題は無いだろう。
とにかく、疲れてしまった・・・。
◇◇
ひと眠りすると、頭がすっきりした。
俺は、あまりにもいろいろありすぎた昨日を一瞬振り返っている。
目の前の娘は、古代エジプトのファラオ、クレオパトラ七世・フィロパトル。
そしてその侍従長、セクメトナーメン。
歴史上のエジプト王朝最後のファラオとして、あまりにも有名な存在だ。
それが、二千年の時を超えて現代に現れ、しかも魔術師とは!
・・・ふう。
整理するとたったこれだけなのだが、改めて考えると・・・ひとつひとつの単語の意味が恐ろしく重いぞ。
うーん、『タイムリープしてきた本物ファラオ』に『魔術師』か。
当初はもちろん演技だと思っていたが、あの雰囲気だろう?
もしかしたらって思って、すっかり混乱しちまった。
とにかく、バカバカしいとは思うけれど、理論的に検証する必要があるだろう。
・・・いや、そんなにバカバカしくも・・・ない・・・か。
俺のアタマに、救われた時の光景がまざまざと蘇える。
あの、動き。
不審者の身体を一瞬にして、肉片へと切り裂いた技。
戦国武将だって、現代の特殊部隊員だって・・・一瞬で人間を四つに分割出来るわけがない。
・・・昨日の彼女たちの眼差しと相まって、あろうことか俺の中を、『もしかしたら』という思いが占めている。
そうなると、持ち前の探求心がムクムクと沸きあがってくる。
そこで、コーヒーを飲んでいるクレオパトラに思い切って聞いてみる。
・・・これは彼女たちの『真贋判定』だ。
見事正解したら、俺の中では九九パーセント、彼女が本物のクレオパトラということになる。
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