助手と空白 (300字)


 探偵はもういない。

 殺人鬼との争いの末、相討ちとなった。

 残されたのは、探偵の助手である私と、殺人鬼の弟子である彼女のみ。

 二人の遺志を継ぐ者が丁度二人いるということで、争いは私ら次の世代へと受け継がれ……たりはしない。彼女と私は友達で、遺志を継がねばという責任感よりも、大切な人を失ったという喪失感が大きく、お互いに何かをしようという気にはまるでなれなかった。

 大切な人と過ごした空間で、大切な人との思い出に浸りながら、たまに電話して、ラインして、そうして誰かのいない空白から目を背けていた。

 世間は平和になったか正直微妙だけど、結局どうでもよく、こんな私を探偵が嘆くか考え、わりと自己中だったと思い出した。

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