26話 末期
タカギ先輩おろそうぜ事件以来、ドミノ先輩が完全に調子に乗ってしまった。
反面、タカギ先輩は今まで以上にドミノ先輩の指示待ち人間になってしまって、「ドミノくん次はなにしたらいい?」が口癖になってしまっていた。
組織として、トップがこうなるのは終わりだと思う。実はトップはどれだけ無能でも、立たせればなんとかなるのだ。基本的に、責任を負う立場なのだから、責任さえ取れれば無能だろうが問題児だろうがどうでもいい。でも今は違う。責任を誰が受け持つのかが分からない。ドミノ先輩か?副幹事のぼくか?幹事はどうした?という状態だ。
ここで再三言っているが、ドミノ先輩がでしゃばるのがまずい。
俺は違うんだ、他の3年とは。
なんて勘違い、してほしくない。
春祭前日、こんなことがあった。
ドミノ先輩が「集合して」と言うと1年がビシッと姿勢を正す。どこの運動部だ。あほか。と心の中で黒い罵声を浴びせ続けるぼく。
もう、腹が立ちすぎて覚えていないのだけれど、白玉の準備で、屋台を出す作業があった。それに、人数が足りないから行けとの事なのだが、言い方が悪い。
「3年が外に準備行ってるのに、なんで1年2年がここにいるの?」
なんでそうなるかと言うと、指示出しの人間が中途半端に2人いるからである。幹事のタカギ先輩は、幹事LINEで受けた指示はそのまま回す。ただ、今は実質的な幹事的権力がドミノ先輩にあるので、ドミノ先輩も指示を出す。部室に残る組は裏方作業があるのだが、外で準備する人間は、時間も人数も正確に指示が出ていない。
そんなことも把握してないで言ってるのか?こいつは。
「なんで」と疑問を口にする前に考えてみてはいかがだろうか。
ついに怒り爆発したぼくは、外への移動中に1年の前で大声で叫んだ。
「なんであんな偉っっそうに言われねーといけねーんだよ、もうどうでもいいよな?白玉なんてあいつらが勝手に言い出したことやし、もうどうでもいいわほんと、投げ出してやろうか」
「どうでもよくはないですよ」
と、1年のネコくんが冷静な口調で言い放った。「放り出しちゃいけないです、どうでもいいってなったら、終わりじゃないですか。それは違いますよ」
ぼくは多少狼狽えた。と、同時にこのネコくんやるなぁ、と感心した。大体、こういうぼくの愚痴からの暴走を止めるのは、多田師の仕事で、こんな愚痴を1人で受け止めて、1人でぼくに「それはやりすぎ」ってブレーキをかけてくれたり、「だよね」って同意してくれたりもする。ぼくは車で例えるなら、アクセルしか付いてない。だから、隣でブレーキを付けて踏んでくれるような存在がありがたかったりする。
「まあ、そうなんだけどさ……」
とネコくんに口を尖らせながら言いつつ、心が少しだけ冷静になれた気がした。
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