第131話吐露
深夜…
静かな座敷には、行灯(あんどん)の火だけが灯る。
春陽と朝霧の唇と唇が重なり…
その僅かな時間…
突然の事で春陽には、何が起こっているのかが分からなかった。
ついさっきまで布団から上半身だけ起きて、普通に、ごく普通に朝霧と話していたはずなのに…
唇同士が離れてやっと…
春陽は、自分が朝霧と口付けしていた事を認識出来た。
そしてそれは、春陽の体に共生する優も同じだった。
しかし、春陽の方は余りの驚きで、目を見開いたまま声も体も固まったままだ。
朝霧は、今度はその春陽の両頰を両手で持ち…
体格の違いから、上から再び春陽に口付ける。
だが、さっきの触れるだけの様な優しい短いものでは無い。
朝霧の唇が、春陽の唇に強く押し付けられ…吸い付いてくる。
春陽は、まだされるがままになっていたが、やがて、朝霧の舌が春陽の口内に侵入しようとした所でやっと我に返った。
そして、思いっ切り朝霧を付き飛ばそうとしたが…
逆に頭ごと強く抱き締められ、囁かれた。
「ハル…ハル…俺は…俺は…小さい頃からずっとお前が好きだった。でも、どんなに望んでもお前と俺は、家同士の正式な婚姻は出来ない。それに…お前に俺の気持ちを告げて拒否されるのが、死ぬよりずっと怖かったんだ…」
「…」
やはり、春陽は、声を出せない。
「思い悩む内に、どんどん時だけが過ぎた。でも、こうなる前に、もっと、もっと早く、お前に言うべきだった…」
朝霧はそう言うと、春陽の頭を解放し、面と向かい…
今度は春陽の両手を、互いの胸の前で握って言った。
「ハル…俺は、美月姫とは結婚しない!そうなれば俺は…朝霧の家から当然追放され出て行く。だからハル、頼む…お前もこの観月家を捨ててて出て、俺と一緒に付いて来てくれ!」
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