第130話重なり

千夏の夢は、春陽も、春陽の中に共生する精神体の優にも衝撃だった。


だが…


ただの、本当に現実でない夢だったかも知れないが…


特に優のショックは相当だった。


あの、喋る事の出来ないはずの千夏の一瞬の叫び声が、いつまでもいつまでも優の中でこだまする。


もしかしたら、千夏にはあの時…


体質を変えてしまう程の恐ろしい程の負荷がかかっていたのではないかとも思ってしまう。


それでも、頭痛の良くなった春陽は、ようやく春頼の看護が無くてよくなり、再び自室の布団で一人眠りについた。


すると…


それに引きずられ、千夏の事で動揺している優も強引に眠りに落とされた。


すると、又、夢を見る。


体が無事だった千夏が、どこか、暗い暗い山中に気を失い、巫女装束で目に目隠しのまま倒れていた。


「千夏ちゃん!千夏ちゃん!」


春陽と優は、又同じ夢を見ていたが…


優だけ叫ぶが、その声は春陽には聞こえてないし、千夏は目を覚まさない。


「千夏ちゃん!千夏ちゃん!」


再度強く優が叫ぶ。


これが現実なら…


優は、春陽から出られない。


ならせめて、小寿郎か真矢に相談したいがそれすら出来ない。


すると…


「ハル!ハル!」


朝霧のその焦り呼ぶ声に、春陽も優も、すぐに現実世界で目覚めた。


いつの間にか、座敷の行灯(あんどん)に灯りもともっていた。


「たか…つ…ぐ…」


春陽は横になったまま、すでに額から汗が滲んていた。


全く知らない幼子が、何故これ程気に掛かるのかは分からないまま…


「どこか苦しいのか?ハル!ハル!」


朝霧は、春陽の右手を握る。


春陽は、ゆっくり首を左右に振った。


「いや…大丈夫だ…ただ…妙な夢をちょっとだけ見ただけた…」


続けて、知らない小さな女の子が…と言いかけたが、春陽はそれ以上はぐっと飲み込んだ。


それを聞き朝霧は、少し安堵したようだったが、何故か表情が固いまま聞いた。


「どうだ?頭痛は?」


「ああ…頭痛は、もう本当に大丈夫。心配掛けた。それより、まだ夜中だろう?美月姫様は良くお休みされておられるか?」


春陽は、朝霧の手を借りながら上半身起き上がりながら微笑んだ。


すると朝霧は、春陽を見詰めていた瞳を眇めた。


「そんな事…そんな事、どうでもいい…俺には、ハル…お前の方が大事なんだ」


「貴継?」


春陽が怪訝そうにすると、朝霧は突然、春陽の体を抱き締めた。


「俺は…ハル…お前が何より、誰より大切だ…」


そう言って、朝霧は、次に春陽の唇に朝霧の唇をそっと重ねた。
















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