第96話紅い褥

銀髪の男は、おとといの晩からずっと、紅い褥の上に全裸でいる。


己の中に流れる特殊な血からくる、激烈な乾きを癒す為に。


その為に…


多数の美女と美青年を何人も交代させ長時間褥を共にし、今は、美青年一人が褥を共にしていた。


美青年は、銀髪の男に背後からさいなまれている。


美青年は、小柄で華奢で…


顔は全く似ていなかったが、その長い美しい黒髪の後ろ姿が、優と優の前世の春陽に酷似していた。


その銀髪の男の声は、動いているのでたまに小さく乱れたり息は弾んでも、大角の淫魔と会話を続ける。


しかし、こんな事はよくある、日常茶飯事で…


よく銀髪の男は、見目の良い男や女をその日の気分でかなり適当に選び…


屋敷の者達にその行為を見られようが全くお構い無しで、大角の淫魔も眼前の光景には慣れてきっていた。


「も、申し訳ございません!次回は必ず、必ずや、観月春陽を連れ参ります故、何卒、何卒、我にもう一度、もう一度だけ機会をお与え下さいませ!」


大角の淫魔は更に畳に額を擦り付けて必死の形相で懇願する。


銀髪の男は、少し考えたが…


「母上に頼まれておこなった昨日の夜明け前の小沢村の焼き打ちが、お前も加わり事の他上手くいったので、今朝は母上も大層上機嫌で、又一段とお美しくあらせられる。故に、今回だけは、特別に許そう…」


「ははー。寛大なご処置、心より、心より感謝申し上げます!」


大角の淫魔は一度顔を上げて言うと、又畳に深々と…深々と平伏した。


「ただし…観月春陽は母上にお頼み申し上げ、この屋敷に…この私の元におびき寄せる事にする。この私の野望を叶える為には…観月春陽の代わりは…他に…何処にもいない…私には…観月春陽の他は…誰もいないのだ…」


そう言って、銀髪の男…


淫魔の前世の藍は…


一本の大きい角の生えた頭の長いサラサラとした銀髪を掻き上げ…


生まれ変わりの藍と寸分も変わらぬ凍れる美貌で…


長牙の生えた口の両端を優美に上げ…


優と春陽に似た後ろ姿を持つ美青年の黒髪を背後から乱暴に掴み…


さいなむように…壊すように…更に激しく下半身を動かし出した。













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