第79話襲撃2

その頃、深い森の木の上、美しい男二人が暗がりもよく見えるらしく遠くを眺め

、何かを待っていた。


二人共、口に牙を携え、一人は頭に長い双角。


もう一人は、短い双角を生やしている。


「こういう時は、ただの人の子も役立つものだ…」


長い角の男がそう言うと、もう一人はにっと笑った。


「本当に、我等普通の淫魔ではあの神社の結界は越えられぬからな。早くせねば

、麗しき銀の君が観月春陽を今か今かと待っておられるわ…」


暫くすると、三人の人間の男が来た。


二人が洋燈の灯りを持つ。


そして、もう一人が巫女装束の雪菜に対し手足を縛め、口に猿ぐつわをし、頭から顔を息の出来る麻の袋を被せ拉致し、肩から担いで来た。


それを見て淫魔達は、にっと笑い、高い場所から事も無げに飛び降りた。


「ご苦労…受け取れ」


小さい角の淫魔がそう言うと、人間の男達に向けて貨幣の沢山入った袋を地面に投げた。


男達は、恐る恐ると言った様子で雪菜を大きい角の淫魔に引き渡すとそれを拾い

、一刻も早く逃げようとした。


だが…


ヒュンヒュンヒュンと音がし、小さな角の淫魔が、人間の男達に早業の刀で斬りつけた。


鮮血が辺りに飛び散り、淫魔達と雪菜が返り血を浴び、人間の男達は激しく呻きながらその場に倒れた。


大きい角の淫魔は、抱いていた、喋られずうーうーと言いながら藻掻く雪菜の袋越しの頭を乱暴に掴んだ。


「やっと捕まえたぞ、男巫女を。銀の君がお待ちだ。一緒に来てもらうぞ!」


だが、大きい角の淫魔は次の瞬間、その囚われ人の胸が着衣越しに、小さいが僅かに膨らんでいるのを見て目を瞠って言った。


「お前!女か!男巫女を攫って来いと言ったはずなのに、こいつら…」


淫魔達は表情を歪ませ、まだ血と土と草塗れになり地面でのたうつ人間の男達を足蹴りした。


「ちっ!仕方無い。仕切り直すぞ!この女は我等の玩具にしていたぶってやるか

?」


小さい角の淫魔がニヤっと笑い、貨幣の入った袋を拾い上げた。


それを聞き青ざめさらに藻掻く雪菜を、大きい角の淫魔が肩に抱え直し笑って言った。


「そうしよう。行くぞ!」


その時、遠くの闇から小刀が二本、目にも留まらぬ速さで飛んで来て、雪菜を抱える淫魔の肩、そして、もう一人の淫魔の心臓を狙った。


だが、刃は、ほんの寸前の所でギリギリかわされた。


「誰だ?!」


大きい角の淫魔が叫ぶと暗闇から、のそっと洋燈を持った巨体の忍者が現れた。


「その担いでる小僧は…観月春陽はこの俺のモンだ…この俺が貰う!」


地を這うような声でそう言い、前世の定吉が、春陽を斬首するためにそこに殺気を放って立っていた。


























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